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管理人は、アメリカ南部・ルイジアナ住人、伊勢平次郎(80)です。
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05/18
ユダヤ系アメリカ人の苦悩、、
ユダヤ系アメリカ人の苦悩、、

動画を載せてもいいんですが、英語だからやめとく。ユダヤ系アメリカ人のバーニー・サンダース上院議員がバイデンを批判したんです。彼は、USが$4ビリオンドルもの軍事援助を毎年イスラエルに与え続けていることを非難した。サーダースをわが妻とボクは支持してきたけど、バイデンが大統領に選ばれた。バイデンは老練な政治家だけど、今回のイスラエル支持は賛成できない。ブリンケンは言葉を選ぶのに困っている。カリホルニア出身のシフ上院議員はユダヤ系アメリカ人です。この人がトランプを糾弾して落選させたんですが「イスラエルには自衛権がある。ハマスは無差別攻撃をしている。だが、私がイスラエルがパレスチナ自自区を占拠していることには異議がある。どうか誤解しないでください」と言った。

パレスチナ解放にアメリカの世論傾く、、

これは、わが妻や、コロラドの親戚もパレスチナは解放されるべきだと。ボクは、ニクソン・キッシンジャーが、当時のイスラエル首相だったベギンに$3ビリオンドルを軍事援助した時、ニューヨークに住んでいたので、以来、イスラエル軍事援助に反対なんです。

バイデンのリーダーシップに陰、、

EUはNATO軍ですが、即時停戦を国連に呼びかけた。ボクは当然と思うし、ハマスが停戦することを勧める。停戦すると国際世論がパレスチナに有利なんです。バイデンはEU と言う同盟国軍の信頼を失ったんです。これは、対中包囲網を推進しているブリンケンの脚を引っ張る。黙っている日本が残念です。伊勢
05/17
スペードのエースと呼ばれた男  (上巻) 第二話
第二話
第6章



四月の八日の朝、長谷川道夫がロシア語の暗号解読を卒業した。先生が二十歳のカレンであること、現地を歩いて地理を学んだこと、暗号を解くのは面白いことが長谷川を飽きさせなかったのである。カレンは天性の教師であった。長谷川が行き詰まると、チェスを持って来た。クリル文字を入れて言葉を横に繋ぐパズルのブックを買ってきた。暗号解読はこのパズルに似ているからだ。それに、ソ連情報局は八百のワードを使うだけであった。ロシア語は日本語のように定義が曖昧でなく、二重に取れる表現がなかった。名前は数字なのだ。その数字も変わらなかった。カレンが、ソ連情報局員の数字にニックネームを付けた。ナターシャ、、イリーナ、アンナ、、アレキサンドラ、、暗号員は女性が多いと言った。暗号部員が三千人であると判った。代わっても、ほんの三十人が一年に代わるようだ。カレンは全ての数字にネームを付けた。つぎに班に分けた。東京班、上海班、ハルピン班、新京班、天津班、奉天班という風に分けた。
「ミス・カレン、最近、ソ連中央情報部は何を言ってる?」
「桜三号特務機関員は誰なのかって言ってるわ」
「桜三号って?」
「私もよく分からないの」
ふたりが話している部屋に島原領事と飛鳥が入って来た。
「長谷川少尉が卒業したってカレンから報告がありました。ご苦労さまでした。しかし仕事はこれからです」と島原が長谷川に言った。横にいる飛鳥の目が笑っていた。
「お祝いに 君たち小崑崙でランチ食べないか?」と飛鳥が申し出た。
「あそこ美味しいわよ。私、酸菜白肉(白菜漬けと鶏の煮込み)、牛肉柿子(牛肉と柿の煮込み)のどれも好きなの」
「カレン、今日の仕事はお終い。三人で楽しんで下さい」とインド象が山中武官を呼んだ。武官の運転するダットサンのヘッドライトの横に日の丸の旗が着いている。警官が外交官だと判る。二十分で大安街の小崑崙に着いた。ダットサンが走り去った。三人が店に入ると個室を頼んだ。カレンは赤いスカーフで顔を見られないようにして座った。カレンがどんどん料理を注文した。すると、「ボクの分もオネガイ」とイワノフの声がした。イワノフは神出鬼没だが、その秘密をカレンは知っていた。
「イワノフが出ると思ってたよ」と飛鳥が笑った。
「ハバロフスクのソ連情報局は何を話している?」と長谷川がイワノフに訊いた。
「クレムリンが日本人をもっと拉致しろと言っている」
「よし。少し聞きたいが、今日は長谷川少尉の卒業式だ。この話しは、武官から講義を受けるよ。イワノフ有難う」
「イワノフ、これから何をするの?」と飛鳥が訊いた。
「島原領事さんがハバロフスクへ行けと命令された。ウランと明後日、出発します」
「交通手段は?」
「順天が、アムールまで乗せてってくれる。そこから漁船でハバロフスクへ行く」と神妙な顔をしていた。長谷川が、イワノフが、河が怖いと言っていたことを想い出した。
「帰って来てね」とカレンがイワノフの手を取った。イワノフが「スパシーボ」と言って鼻をすすった。ジャポチンスキーは力持ちだけではなく、おセンチなのだ。だが、もの凄い量の焼肉を食った。パンに、べったりとバターとイチゴジャムをぬっていた。カレンまで口を開けて呆れていた。
「ミス・カレン、アパートを引き払うノ?」
「領事さんの命令なの」とふたりは、ロシア語で話していた。
「その方がいい。向かいの家に特高が住む。ソ連製のライフルを一丁上げた」と飛鳥がカレンを驚かした。
「どうやって通うの?」と長谷川。
「山中武官が天龍公園まで向かえに来てくださるの。一緒に行けるわよ」とカレンは長谷川と館に住めるので嬉しかった。
「飛鳥さんと長谷川さんはこれからナニスルノ?」とイワノフが言うとカレンが身を乗り出した。
「桜三号と私に上海へ行く命令が出た」
カレンがびっくりした。
「桜三号って?」とカレンが飛鳥に訊いた。
「長谷川少尉のことさ」
長谷川は初耳なので黙っていた。
「長谷川さんが桜三号だったのね?どのくらいの期間行かれるのですか?」とカレンが心配顔になった。
「一ヶ月かな」
「シャンハイ、キヲツケテ」とイワノフが立ち上がると三人を抱いた。そして出て行った。三人が外へ出ると春風がそよそよと吹いている。松花江も解氷期に入った。川柳が芽を吹き出している。三人がチューリップの咲く庭を通って喫茶店に入った。ハルピンの四月の気温は、最低が五度で最高が十四度なのである。五月になると気温が最高二十二度と上がる。北海道に似ているかと言うと、そうではない。高低の激しい大陸性気候なのである。最も寒いのは一月で、マイナス二十二度まで下がる。松花江が凍結する。
                  
上海に出発する前日、飛鳥と長谷川が向かいの家の特高に会った。特高もペアなのである。飛鳥から貰ったロシア製のライフルを喜んでいた。その夕方、家族だけの晩餐が用意された。カレンがエプロンをかけてイリアをヘルプしていた。テーブルの上に、赤と黄色のチューリップの鉢が置いてある。ヤコブがワインを配った。カレンが長谷川の横に座った。
「長谷川少尉が卒業した。これからミス・カレンは何をするの?」と飛鳥がカレンに話しかけた。
「もう一人暗号解読員を訓練するんです。この人はベルリンで育った日本人でロシア語はベルリン大学で習った人なの。お父さまが日本大使館員なんです。だから難しくはないの。でも、、」
「でも?」飛鳥は彼女の懸念が気になった。
「上海から帰って来られたら話します」
「島原領事さんが選んだの?」
「そうです」
長谷川が「カレンは何か気になっている」と思った。

続く
05/16
スペードのエースと呼ばれた男  (上巻) 第二話
第二部
第5章



一九三九年の正月が来た。飛鳥が新京の関東軍参謀本部に呼ばれた。

「俺は、今週、新京で仕事をする。報告があるが中国戦線の戦況を聞いてくる」と神妙な顔をした長谷川とカレンを見て笑った。カレンが長谷川にスケジュールを書いて渡した。そして自分のアパートに帰って行った。

正月の三日、島原領事が飛鳥と長谷川を新年会に招いた。長谷川が午後の三時に領事館に行くと、カレンも、イワノフも呼ばれていた。島原領事に飛鳥が出発準備でこられないと伝えた。招待客は日本企業の社長夫妻たちであった。駐在武官二人も夫婦で現れた。長谷川は堅苦しい宴会でないので安心した。片隅にバーがあった。バーテンがワイングラスを並べている。しばらく立ったままでワインを飲んだ。島原夫人と正月の振袖を着た娘二人が入ってきた。長女の和子は夫を同伴していた。薄紫のドレスを着たカレンが長谷川の横に座った。春の田んぼのすみれの花のようである。何とも言えない気品がある。来賓の夫人たちが「まあ、美しいかたね」と見とれた。「インド象」と親しまれている領事が新年の挨拶を行った。「妻も、娘たちもハルピンがお気に入りなんです。毎日、買い物ばっかり行っています」と言うと爆笑が起きた。「この戦争が早く終わって、みなさんが平和に暮らせる日が来ることを祈ります。それでは、乾杯」と飲み乾した。お節料理が次々に出て来た。蒲鉾、昆布の煮しめ、高野豆腐、栗きんとん、、イワノフを見ると布袋(ほてい)さんのように笑っていた。宴会は短かったが新春は気持ちがいい。カレンが、領事がくれたお土産のお重を持っていた。カレンはスカーフを巻いていたので本人に見えない。長谷川の妻に見えた。またそのように振舞っていた。玄関に二頭立てのベルカが待っていた。御者はウランだ。カレン、長谷川、イワノフが乗り込んだ。ベルカが鈴を鳴らして雪の上を走り出した。
「ルテナント、明日の夜、何をシテイル?」とイワノフが長谷川に訊いた。
「手紙を書くぐらいで何も予定はないけど?」
「拳闘の試合があるよ。ミニイク?」
「私も行く」とカレンが目を輝かせて大声で言った。
カレンと長谷川が天龍公園で降りて歩いて館に帰った。密偵の尾行が気になったが、「組織が素人臭い。契約殺人だ。黒ジャンパーは死んだ。しばらくは、襲撃はないだろう」と言った飛鳥の判断を信頼していた。飛鳥は朝早く迎えに来たダットサンに乗って平房飛行場へ行った。

カレンが立ち上がると書斎からアルバムを持って戻ってきた。
「キタイスカヤ大街っていうのよ。今夜、ここへ行くと思うわ。イワノフとウランはこの街に住んでいるのよ」
時間かっきりにイワノフがベルカで迎えに来た。ハルピンの駅前のロータリーを通って西へ向かった。カレンが言ったようにキタイスカヤ大街に入った。十九世紀に建てられた四角い建物の中庭に入った。噴水がカチカチに凍っていた。三人は地下へ降りて行った。耳がツンボに鳴るかと思うほどの歓声が聞こえた。中に入るとタバコの煙が凄い。ボーイがソーセージ、ウォッカ、ビールを盆に乗せて売っていた。みんなロシア人だ。長谷川を見て不審な顔をする者もいたが、イワノフを見ると、「カクディラ(元気かい)」「オーチン・ハラショ」と接吻し合っていた。
「ウランはどうしたの?」とカレンが訊いた。
「え~と、ウランは、チョット、イソガシイヨ」とイワノフが笑っていた。何かを隠しているとカレンが思った。観衆がウォッカのボトルを回し飲みしていた。イワノフが長谷川にも飲めと壜を差し出したが長谷川は手を横に振った。
拳闘は通常四回戦と決められていた。試合は床の上でリングはない。グローブは革だが現在のものに比べて小さい。一発食らうと痣(あざ)になる。激痛に顔を歪める。だから、なかなか殴り合わない。コンテンダーが両腕を高く挙げて顔を防御していた。グルグルと回った。二人共、一発勝負を狙っているのである。

群衆は最後のグランドマッチを観に来ている。最後のマッチだけが六回戦なのである。賭けの切符が売られた。ビラが配られた。長谷川がビラを見ると、なんと「ウラン対ボルガ」がラストなのだ。勝利比率は三対一でボルガに賭ける者が多かった。二人が秤に乗った。判定が「合格」と叫んだ。掛け金の二十二%が勝利者に払われる。敗者には十八%である。五十%が賭けた者たちに払われる。十%が胴元に入る仕組みなのである。
「ミドル級チャンピオン、ボルガ・モスコビッチ」とメガホンで発表すると大歓声が上がった。
「ミドル級ナンバーエイト、ウラン・サマルカンド」
呼ばれたウランは眼を左右にギョロギョロ動かしていた。
「ウランが挑戦者だったのね。わ~い」とカレン。そしてイワノフが両手を挙げて鬨の声をあげた。
「ウラン、大丈夫?」とカレンがウランに話しかけた。
「ミス・カレン、オーチン・ハラショ」とウランは言って眼を瞑って祈っていた。イワノフがウランを元気着けるように両手でグローブを握っていた。「カーン」と鐘が鳴った。ボルガが飛び出した。ウランが早速、追い込まれた。ボルガは次々とパンチを繰り出した。ウランが両腕を挙げて顔を守った。ボルガがウランのみぞおちの辺りに一発、ブチ込んだ。これは効いた。ウランの右腕が下がった。左のパンチが顔に炸裂した。これもよく効いた。ウランが逃げ回った。右フックが横っ腹に食い込んだ。一回戦でダウンしそうだ。そのとき「カーン、カーン、カーン」と鐘がなった。ウランが椅子にドタンと座った。いつものギョロ目が虚ろだ。イワノフが冷たいタオルをウランの頭に載せた。ウランが水を飲んでバケツに吐いた。血が混じっている。「三回も持つかな?」と誰かが言った。イワノフがその男を睨みつけた。男はギョッとした顔をして、すごすごと姿を消した。

「カーン」と鐘が鳴った。二回戦が始まった。今度は決心したようにウランがボルガに向かって行った。このままだと三回も持たないと自分でも思ったのである。ボルガが背中を屈めて雄牛のように突進して来た。左右からパンチを繰り出した。空振り、、ウランが右のグローブでボルガの額を押さえていたからである。ボルガがウランの腕にパンチを入れた。腕が下がった、、またボルガのパンチのラッシュが始まった。右の耳~左の目~わき腹~クチ、、唇が切れた。鼻血が吹き出した。ウランの右目のまぶたが目に被さり、顔が腫れ上がってバケモノのようだ。
「もうだめだ」とイワノフが言った。審判が中に入って停めた。そのとき、鐘が鳴った。イワノフがウランの鼻にワックスを塗った。
「どうする?」
「ウラーの神に召されても続ける」とウランが言った。

「カーン」と鐘が鳴った。三回戦が始まった。ボルガが信じられないという顔をしていた。ついに、ボルガが殺しにかかった。右のストレートにウランがよろめいた。「停めて」とカレンが叫んだ。ウランが姿勢を立て直した。そのバケモノのような顔を見て、ボルガが天井を仰いで笑った。チャンピオンが大口を開けて笑っていた。そのとき、ウランが渾身の力を絞って右のアッパーカットをボルガの顎にブチ込んだ。首の頚椎に電気が走った。ボルガが床に倒れた。審判がボルガを見ると、眼が虚ろになっていた。タオルを振った。観衆が割れるような歓声を上げた。カレンも飛び上がって叫んでいた。そのカレンに酔っ払いが抱き着いた。長谷川がその男を両手で押すと殴りかかって来た。イワノフがその拳を掴んだ。男が恐怖に青くなった。長谷川はこの夜の顛末を始めから終わりまでハンザ・キャノンに納めていた。飛鳥に見せたいのだ。

「面白かったわ」とカレンがまだ興奮していた。そしてクールな長谷川に「あなたは面白かったの?」と訊いた。
「始めてなので驚いた。でも面白かった」
「私、ウランに賭けたのよ」と分厚い満州円の札束を見せた。
「それどうするの?」とイワノフが笑っていた。
「みんなにビールを奢るわ」
小さな女王様の誕生である。
再び、ベルカに乗った。今度はチャンピオンとなったウランも一緒なのだ。中央大街へ向かっていた。極東のパリと呼ばれた街である。

四人が大きなテーブルに陣取った。中央に座ったカレンが正しく女王に見えた。
「ぼくが払う」と両目に黒い痣のウランが言うと賞金の入った布袋をテーブルの上に乗せた。
「ひゃ~」とイワノフが笑っていた。

続く
05/15
スペードのエースと呼ばれた男  (上巻) 第二話
第二話
第4章



「マダム、イリア、私たちは、領事館に行きます。鴨を六羽分けてください」
「飛鳥さん、勿論よ、領事さんや武官さんたちにあげてください」
「領事さんにボーナスを貰ったのよ。ママが欲しがっていたロココのタンスを買ったの。四時から鴨の晩餐なの。それまでに帰ってこれる?」とカレンが長谷川に訊いた。

飛鳥と長谷川が手提げ袋に鴨を入れて、ハイヤー会社に歩いて行った。二人共、普段着である。聖ソフィア大教会のソフィアスカヤ通りを通って領事館に行った。クリスマスが近いので教会はイルミネーションに飾られていた。
「おお、有難う。家内と娘たちが喜ぶ」と島原領事が長谷川から鴨を受け取った。日本人のコックがやって来た。鴨の脚を持って眺めていた。
「これは脂の乗った鴨ですね。美味いですよ。野鳥は慣れています」と領事に言った。

島原領事にソ連国境を超えたこと~今のところ平穏であること~陳王民が死んだこと~虎頭要塞には行けなかったことを話した。飛鳥の表情はいつもと変わらない穏やかな顔であった。「ごくろうさんでした」と領事は言って満足したようである。
島原がコックにフランスのワインを一ケース持って来させた。ふたりを武官が送ったが、天龍公園で降りた。長谷川がワインを肩に担いだ。歩いて帰ると館の前の道路に木炭トラックが停まっていた。家具屋である。二人の男がタンスを運んでいた。
「あれ、イワノフじゃないか?」と飛鳥が言うと、毛糸のスキー帽を被ったイワノフが振り向いて笑った。甥のウランが相棒なのだ。ウランがトラックの運転手に帰れと言った。カレンがチップを上げるとトラックがモウモウと煙を上げて走り去った。
「マダム、ボクたちが鴨の毛を抜きます」とイワノフがイリアに言った。
イワノフはハバロフスクの肉屋の息子だった。ウランも一緒に働いていたのだと。十四羽の鴨は瞬く間に真っ裸になった。新しい羽毛が棘のように突き出ている。それをペンチで引き抜いた。その後、暖炉の火で残りの羽毛を焼いた。キッチンへ持って帰ると、支那包丁で足と首をバンと切った。横のウランが小刀で肛門から腸を引き出し~肝臓~砂肝~心臓をボールに入れた。ついで、首に指を入れて食道の皮を引き抜いた。見ていたカレンが悲鳴を上げて逃げて行った。
「どう感謝してよいのかわからない。スパシーボ、スパシーボ」とヤコブがイワノフの手を取っていた。イリアが姪たちと料理に取り掛かった。長谷川がワインのケースをキッチンテーブルに降ろした。
「ブルゴーニュのワインよ」とイリアがラベルを見てヤコブを振り返った。一同が集まって来た。ワインに向かって、手を合わせた。ヤコブが旧約聖書の教えを呟いていた。また、盛大な晩餐が始まった。ヤコブが音頭を取って乾杯した。まず前菜から始まった。
「母なる大地よ」とヤコブが言うと、全員が指を組んだ。長谷川がカレンを見るとお祈りをしていた。カレンは信仰深い女性であった。イリアと姪たちが鴨の丸焼きを持って現れた。「おお」と言う歓喜の声が上がった。長谷川が北大時代に読書クラブで読んだトルストイの「戦争と平和」を想っていた。



「ユダヤ教のお正月はいつかな?」
カレンの指導の合間、思い浮かんだ疑問を雑談のように交わしていた。
「九月なのよ。三月まで祭日はないの」
「でも、クリスマスは?」
「私たちはキリスト教徒じゃないからクリスマスは祝わないわ。それとも教会に行きたいの?」
ヘーゼルの瞳が不思議そうに瞬いた。
「日本の田舎は、お寺だけだから。滅多に教会やお祈りをすることがないし、自分にはユダヤ教もキリスト教も、よくわからないんです」
「今日から年末まで領事さんは日本にお帰りになる。私たちも冬の休暇なのよ」
カレンと長谷川がペチカの燃える居間で話している横を通り過ぎて飛鳥はひとりで唐人街へ出かけて行った。飛鳥には息子がいると言っていたから、何か送るんだろうと長谷川が思った。
「それなら今から昼のミサに行く?」とカレンが長谷川の目を覗いた。
「そうだね。行こう」
喜色に染まったヘーゼル色の瞳が輝くと、長谷川には肯定する選択肢しか残されていないように感じた。カレンがミンクのコートを着た。長谷川はハルピン市民の姿にソフトをかぶった。ふたりはハイヤー会社に歩いて行った。今日も小雪が降っている。窓からイリアが見ていた。手をつないでいないので、イリアはひとまず安心した。長谷川が上着の内側に吊った南部を手で触った。胸の中で、自分は参謀副官に仕える憲兵少尉なのだと言い聞かせていた。カレンがその長谷川をじっと見ていた。
「何を考えているの?」
「何も」
女の勘と言うものは鋭く、そして侮れない。
「今日は、私のことだけ考えて頂戴。明日、私は二十歳になるの」
初めての愛の告白であった。長谷川はカレンをじっとみて頷いたのである。ふたりがソフィアスカヤの広場でハイヤーを降りた。石段を登って伽藍の中に入ると、ローソクの光りでキューポラの天井の天使の絵が見えた。その周りを聖人が取り囲んでいる。二人共、ロシア正教のキリスト教徒ではない。カレンが口にハンカチを当てて咳をした。お香の匂いにむせたのだろう。ふたりは儀式を信者の後ろに立って見ていた。長い時間が経ったように思えた。鐘楼の鐘が鳴った。外へ出ると群集が抱き合って頬に接吻をしていた。長谷川がカレンを引き寄せた。そしてカレンの林檎のような頬に接吻をした。カレンの頬が火が着いたように赤くなった。長谷川が自分に驚いていた。――自分は、ロシアナイズしたのか?それとも自然なのか?
「カレン、何処へ行く?」
「ロシアン・テイールームに行きましょう。お土産コーナーもあるから」

ショーケースの中をカレンが覗いていた。どれも甘そうで面白い図柄なのである。そのうちの一つを指さした。何の絵かわからないが、どうもサンタクロースのようである。カレンが振り返って「これでいい?」と言う風に長谷川を見た。店員が皿に載せた。コーヒーを頼んで、テーブルに着いた。勘定をした後、お土産コーナーで、紫色の切り子ガラスのお皿をイリアに買った。店の中はソフィア教会から来た人たちで一杯であった。長谷川が黒いジャンパーを着てアイリッシュ・キャップを被った男を見た。何処かで見た顔だなと思った。想い出せなかった。その中年の男も見ぬふりをしていたが、長谷川は視線を感じていた。
「手洗いに行く」とカレンに言って長谷川が立ち上がった。やはり男がチラッと見た。トイレに入った長谷川が南部をホルスターから抜いてクリップの弾丸を確かめた。努めて冷静に席へ戻ると「カレン、店を出よう」と言って手を取った。店を出てからも手を放さなかった。カレンを引っ張るようにどんどん歩いた。
「長谷川さん、どうしたの?」
初めは嬉しさもあってか、長谷川の様子がよくわからなかったようだが徐々にその緊張感が伝わってきたのだろう。引かれる掌にじっとりと汗が滲んだ。ビアホールの角を曲がったところで、やはり角を曲がる数人の足音がした。美術店のウインドウにあの男の姿が映った。長谷川がカレンの手を引っ張って走った。カレンが氷に滑って倒れそうになった。お土産に買った切り子の皿が砕けて飛び散った。長谷川がカレンを抱きかかえて走った。ウエストが細く意外に軽い娘だと思った。ふたりが、トラックの陰にしゃがんだ。カレンの目が怯えていた。石畳の上を足音が近着いて来る。足早になっている、、長谷川が外套のボタンを外した。カレンに手まねで腹ばいになれと自分から腹ばいになった。カレンの顔の下に自分の帽子と手袋を入れた。そして南部九四式短銃を引き抜いた。安全子を落としてハンマーを引いた。追ってきた男たちは三人であった。一人がトラックの陰から顔を出した。長谷川は、このへんだろうと照星を定めた。ふたりの男が姿を現した。手にピストルを持っている。その瞬間、長谷川が引き金を引いた。発射音が空気を裂いた。カレンが悲鳴を上げた。一人が驚いたように仲間を見た。

――当たらなかったのか?数秒して男が前のめりに倒れた。アイリッシュ・キャップの男が助け起こそうとした。長谷川が銃口を五十センチ下げて引き金を引いた。右肩に当たったようだ。今度は、銃口を左下に下げて両手で撃った。黒いジャンパーの男はまだ立っている。数秒してからドタっと倒れた。三人目は逃げた。カレンを見ると、人間が目の前で死ぬ恐怖で唇が真っ青だった。長谷川が抱き起こした。カレンが長谷川の首に両腕を巻いた。長谷川がその唇に接吻をした。カレンの頬と唇に幾ばくかの赤みが戻っていた。サイレンの音が遠くで聞こえた。ハルピン市警だろう。足早に歩いて中華料理店に入った。カレンが化粧室に行った。二人の満人の警官が入ってきた。店の中を見渡すと真っ直ぐ長谷川のテーブルに歩いてくる。「リーベンレン(日本人)?」と誰何した。長谷川が襟章を見せると顔を見合わせて出て行った。二人は、ソフィア教会へ行って、ハイヤーに乗り込んだ。来たときと同じ運ちゃんであった。カレンは、館に帰るまで長谷川の手を握っていた。「今日の出来事をママに言ってはいけない」と長谷川がカレンに言った。彼女は黙って頷いた。



長谷川が部屋に入ると飛鳥が「聞いた」と読んでいた新聞を置いて言った。
「誰にですか?」
「ウランだ」
「君たちの行動を知らせるために出した。怪我はなかったか?」
「怪我はありませんでしたが、南部の七ミリメーターはダメだと思います」
「知ってるよ。今、口径を大きくしている。それまで、トカレフを使え」
「ボクを狙った殺し屋は誰なんですか?」
少しばかり冷静さを取り戻した途端、危害を加えられたことに対して腹が立ってきた。
「あのハイヤーの運転手だ。後の者はゴロツキだろう」
「ゴロツキ?」
「逃げたからね」
「何故、ボクを狙ったのでしょうか?」長谷川はそう口に出したものの、心の中ではある答えが出ていた。
「少尉、陳王明を忘れたのか?」
「復讐?」
「そうだ。ソ連中央情報局の面子をイワノフが潰したからね」
長谷川は自分の帰属する組織が何であるかを思い知ったのだ。
「どうして、ボクと陳を繋いだのでしょうか?」
「われわれが牡丹江に来たことを陳が知らせたのだろう」
「なるほど。カレンも尾行されているのですか?」
「いや、彼女は領事館の隣のビルの地下道から領事館に入っているし出勤時間も自由となっている。さらに守られている」
「守られている?」
「特高警察さ。それに領事館の横にハルピン関東軍憲兵分隊の駐屯所がある。恐くて、露探は近着けないのだ」
「彼女のアパートは大丈夫でありますか?」
長谷川は気になっていた。
「同じアパートの階下にその特高が住んでいる。カレンが出勤すると後ろから、ぶらぶらと着いて行く。いずれにしても、この仕事が危険なことを彼女は周知している」
「少佐殿、カレンは、何故、危険な仕事を引き受けたのでしょうか?」
「赤軍に追われたユダヤ難民は、島原領事さんに恩がある。領事さんが辞めてもいいと言ったが、一年続いた。あのドーチも命を賭けているのだ、少尉、それを忘れるな」

続く
05/15
(速報)イスラエル情報


今日のウエスト・バンク。全面戦争とまで言わないが、今までになかったパレスチナの反乱。

パレスチナは中距離ミサイルを開発、、

2014年の暴動とは全く違うミサイルを自分たちで開発。当時は、ガザから近隣のイスラエル側に25キロ程度の距離のミサイルだった。2021年、180キロメートルに届く。その上に巨大化した。イスラエルのほぼ全土に届く。現在、テルアビブの近くに撃ち込んでいる。空港の一つを爆破した。テルアビブ市街を避けているように思える。パレスチナのミサイルは、イラン、ロシア、シリアから得たものを自分で改良している。写真を後で載せますね。陸自のミサイルと変わらない。一万発を持っていると米情報部です。コメントには、パキスタン、マレーシア、アラブ諸国が応援するコメントが多い。「パレスチナが結局、勝つ」と言う者が多い。伊勢
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