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十六人のロビンソンクルーソー |

十六人のロビンソンクルーソー
終戦後、十二年が経っていた。宮城県気仙沼港から大王丸が処女航海に出た。百八十トンの大王丸は遠洋はえ縄マグロ漁船である。乗組員は伊勢者十六人であった。乗組員の練習を兼ねて三陸沖から北海道の函館沖でクロマグロを追った。大王丸が焼津で初荷を降ろした。十月、近海マグロの漁期が終わった。十一月の初旬、大王丸は、南太平洋に足を延ばすことにした。ニューカレドニアヘ行って、ビンナガを取った。年末に気仙沼港に帰った。水揚げも良く、乗組員に事故もなく、病気も出なかった。乗り組員にボーナスを払った。十六歳のリクが生まれて初めてボーナスを貰った。
「親方、水産庁が、メバチ、ビンナガならハワイ沖、ニュージーランドから南極海ヘ行けば、ミナミマグロの季節や言うとるわ」と船長の甲子男が漁労長に言った。
「南極海か?ちょっと遠いなあ。保険も上がったしな」
「そんなら、ビンナガ追ってハワイヘ行こう。わしら、南極海は行った事がないし、海難事故にでも遭ったら、二度と日本の土を踏めへんで」と航海長のゲンタロウが言った。ゲンタロウは甲子男の叔父さんである。
昭和三十四年の正月、大王丸が気仙沼を出港した。ウエーキ島の沖で、二千本の針の着いた枝縄を海水に降ろした。六時間後、はえ縄を引き揚げると、メバチが掛かっていたが、頭だけ残して胴体がなかった。
「シャチや!」
「親方、これやとハワイもあかんやろ。マーシャル群島ヘ行こか?」
「甲子男、おまえが言うとったニュージーランドの南ヘ行かへんか?タスマニアが安全やが、アホウドリが釣ったマグロを食い荒らすそうやで」と親方が言った。
気仙沼を出てから十四日が経った。大王丸は、五千四百七十六キロ南へ来ていた。北緯〇度、東経 一六〇度である。ニュージーランドの南へ五百キロ行くとマッコウ鯨が潮を吹くのがあちこちに見えた。はえ縄を流した。ついに、ミナミマグロの顔を拝むことができた。マグロで、船倉をいっぱいにして大王丸が焼津ヘ帰った。水揚げが終わると再び北極海に戻った。だが、親方が、マグロの数が減っていると甲子男に言った。
「水温が上がっとんのや」
「親方、もっと南へ行ったら獲れるんか?」
「南氷洋へ行けばおるやろな」
ふたりは、そのときは、まさか、あんなことになるとは思わなかったのである。
六月に入った。大王丸がニュージーランドから千キロ南に来ていた。水温が十度でマグロが好む温度である。やはり、連日の大漁であった。ところが、四日目、二千本の針に一匹も掛からなかった。
「マグロは何処へ行ったんやろか?」
「水温が十五度に上がっとる。南へ行ったんや」
大王丸は西経一八〇度線を南に下っていた。南緯は五〇度であった。これは、南極海の真っただ中ということである。そこからさらに南は氷が漂う南氷洋である。
「船長、これ以上、南は怖いで。氷山が浮かんでおるやろ」とゲンタロウ叔父さんが、甥の甲子男を船長と呼んだ。――おまえは、十六人の命を預かる船長やでと言いたいのだろう。
はえ縄を五時間掛かって海水に流した。二時間後、引き揚げると五十本ほどのミナミマグロが掛かっていた。次の日も同じであった。二日目の夜、低気圧の中にいた。大王丸が高波の中に突っ込んで行った。船尾が宙に浮くとプロペラがカナキリ声を出した。そのとき、短波ラジオが警報音を出した。捕鯨船団だ。
「大王丸、それより南は氷山の棚が横たわっている。北へ進路を取られよ」
「こちら大王丸。警告了解。視界、極悪。北へ戻る」
「航海の安全を祈る」
「甲子男、この暗い海では何が起きるか判らん。わしは、氷山が怖い。方向を北へ取ってからいくらも進んでおらん。さっきの大波で短波ラジオのアンテナが壊れてしもた」
「叔父さん、何が原因なのか速度が出んのや」
「わしら西へ流されとるで。雪まで降って来た」と髪に白いものが混じった親方が悲痛な声を出した。日本に残してきた家族を想っているのだ。
六月の八日、霞が関の海上本庁が捕鯨母船から報告を受けた。ラジオで呼びかけたが大王丸が応答しないと言っていた。海保が色めき立った。
六月十八日の朝、雲間に青空が見えた。海面に流氷が漂っていた。あるものは大形トラックぐらいのサイズであった。どういうわけなのか靴の形をしていた。ゲンタロウが煙突の上に上って行った。見ると煙突そのものが半分に折れていて、一部が中に落ちていた。これが大王丸の速度が出ない原因であった。アンテナのディッシュは根こそぎ消えていた。甲子男が機関を停めた。こうして、大王丸は海上に漂っていた。煙突は修理できたが、短波のディッシュがどうにもならかった。甲子男は機関を始動させて北ヘ進路を取った。ゲンタロウが船首の探照灯を点けた。甲子男が航速を十五ノットに上げた。ジーゼルが力強い音を立てた。だが、午後五時を過ぎたころ、再び北風が吹き出して波が高くなった。ピッチングとローリングに翻弄された。その上、みぞれ交じりの小雪が降り出した。
「甲子男、小さくても氷山は怖いで」とゲンタロウが言うと、甲子男が航速を五ノットに落とした。これでは、波間に停止しことになる。それでも暗闇で氷山に衝突するよりは良いと考えた。
「みんな寝ろ。起きとるのは、叔父さんと俺だけや。叔父さんも寝たらどうやな?船は停止したも同じやから俺だけ起きとりゃええ」
この判断は間違っていた。昼間の疲れが出た甲子男がウトウトと眠ってしまったのである。
「甲子男、起きろ!右舷を見ろ!」
甲子男が目を覚ますといつの間にかゲンタロウが横に来ていた。探照灯の中に氷山がぼんやりと映っていた。戦艦大和ぐらいのサイズなのだ。甲子男が舵輪を左へ回した。大王丸が見えなかった氷山に当たった。大王丸が横転した。ぐっすりと寝ていた乗組員たちがベッドから放り出された。三人の少年がパニックした。親方がリクの頬を平手で叩いた。
「救命具を着けろ!」と航海長が伝声管に向かって怒鳴った。だが、大王丸は海面に横にはなったが、沈まなかった。左舷側に、甲子男、ゲンタロウ、玉夫と乗組員たちが立っていた。辺りが明るくなり初めていた。気温がグングンと下がって行った。
「みんな、船室を整頓しろ!」
「甲子ちゃん、ジーゼルは、何人かかっても起こせへんで。そやけど、救命ボートの発動機で発電できるかも知らん」
これはうまく行った。電灯が点いた。。料理用のプロパンガスも使えた。湯を沸かして船室を温めることができた。食料は心配なかった。餅、うどん、肉類、牛乳、乾燥野菜が氷点下で凍っていた。
「叔父さん、運命を天に任せるしかないなあ。このままやと、南極へ流れ着くで」
「甲子男、失望したらいかん」
漁船員は楽天家が多い。誰も悲観しなかった。鉱石ラジオを持っている者がほとんどだった。演歌を聞いたり、落語、漫才、浪曲、、広沢虎造の森の石松を聞いた。
「甲子男、海保がイギリスの砕氷船に俺たちを捜してくれと頼んだらしい」
八月三十日になった。遠くに飛行機の爆音が聞こえたが、機影は見えず、北へ飛び去った。六月十九日に、大王丸が氷山に衝突してから七十日が経っていた。ゲンタロウが六分儀とクロノメーターを睨んでいた。みぞれもなく、波浪も静かだった。
「甲子男、西経は三五度、南緯は四〇度に近いでえ。すると、五千キロは西へ来とるね」
ゲンタロウが地図を広げて赤鉛筆で、ある地点に丸を描いた。
「ええ~?ケイプタウンの南におるんやな?そのサソリのような形の岬はなんや?」
「ラーセン氷棚ちゅうんや。陸地の岸にできた氷の縁側なんや」
「ほなら、わいらは南極ヘ来とるんか?」
「親方、その通りや。今日、南極が見えるやろ」
「叔父さん、南極が見えた」と甲子男がゲンタロウに双眼鏡を渡した。双眼鏡に高く険しい山脈が映った。夕刻にラーセンに着いた。氷原にテントを張った。船内ヘ戻って、米、味噌、醤油、塩、砂糖、、持てるだけの食料を担ぎ出した。リキが東の空を見てドキッとした。巨大な闇がこちらに向かって走ってくる。月の影なのだ。その影は瞬く間に空の半分を覆った。西を見ると太陽がみるみる弱くなった。オレンジ色のコロナの輪が見える。まるで悪夢を見ているようなのだ。
翌朝、リクが小便にテントを出ると、ペンギンが並んで見ていた。ゲンタロウが指揮して救命ボート二隻を持ってきた。気温はマイナス二度だった。
「叔父さん、救命ボートをどうするんや?」
「運搬用のソリを作るんや。食い物やが、持てるだけ持って行こう」
ラーセンの岸に着くのに三日かかった。雪原にテントを張った。
「機関長、これいかんな」と甲子男が自作のアンテナを試して言った。
「甲子ちゃん、増幅器がないとあかんのや」
飯を作る以外、やることがなくなった大王丸の一家が南極探検を楽しんだ。セイウチや白熊を見て喜んだ。だが、ついに十月になった。南極に春が訪れたのである。リクたち三人の少年が湖を見つけた。リクが戻って来た。
「航海長、湖の底に森があるでえ」
みんなが驚いて見に行った。湖底に針葉樹の森が鬱蒼と茂っていた。生き物はいなかったが、毬藻のような藻が生えていた。
昭和三十五年の正月が来た。青年たちが残りの餅で雑煮を作った。スキ焼、白菜の漬物、、鯵の干物、、日本酒を鍋で沸かして祝った。食料が尽きる一歩手前であったが、アザラシを食えばいいと思うようになっていた。
甲子男が毛布に包まって寝転がると通信科学入門を読んでいた。甲子男がガバッと起きて機関長の肩を叩いた。
「玉夫さん、これ読んでみい。モールス信号の簡単なのができると書いてある」
ふたりの興奮した声を聞いてみんなが集まって来た。二時間で無線機が完成した。電線でアンテナを張った。全員が注目していた。海軍で通信を習ったゲンタロウが電鍵をカタカタと打った。返事はなかった。二時間、なんども繰り返したが返事はなかった。
「届かんのやろ」と親方が悲しい声を出した。そのとき、電鍵がカタカタと鳴った。ゲンタロウがガバッと起きて無線機の前に座った。五分ほどで電鍵が停まった。
「おい、甲子男、南アフリカのケープタウンからやで」
甲子男が目を丸くした。
「何を言うてきたん?」
「位置を知らせよと言うて来た」
「万歳!」
クルーが踊り上がった。ゲンタロウが位置を知らせた。五分後、また電鍵が鳴った。
――シャベルはあるか?雪を慣らして、八〇〇メートルの滑走路を造れ!明日の正午、北の空を見よ。貨物機が見えるか、または、爆音が聞こえるはずだ。病人はいないのか?
――全員、十六名は元気である。貴国の親切を忘れることはない。
「おい、リク、コーヒーを沸かせ!パンを焼け!残りの一五名は滑走路を造れ!」と甲子男が船長に戻っていた。
去年の正月、気仙沼の港を出てから一年近くが経っていた。快晴である。午前十一時、親方がベンチを壊して作った薪に火を着けた。十六人が北の空を見ていた。爆音が聞こえた。双発の軍用機だ。十六人が千切れるばかりに手を振った。軍用機が頭の上を一周すると楽々と着陸した。胴体のドアを開けてパイロットが二人降りた。十六人が駆けだして行った。
「ハロー、ロビンソンクルーソー』
大王丸の一六人を乗せたアブロアンソンが雪原を離陸した。水平飛行に入ると、副操縦士が紅茶のポットとビスケットを持ってきた。ケープタウンまで六千九百キロで、十六時間だと言った。紅茶を一口飲んだ十六人の頬を涙が流れて膝の上に落ちた。
完
【注意】 著作権は伊勢平次郎にあり。コピー厳禁です。伊勢
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アンドロメダの蟻人 |

アンドロメダの蟻人
爬虫類、魚類、鳥、虫、、ワタルがアマゾンの生物図鑑を見ていた。
「ワタル、もう十二時よ、寝なさい。また学校に遅れるわよ」
ワタルは高校一年生である。富子は息子が動物に興味があることを喜んでいた。自分もそうだったからである。ただ、富子の興味がパンダなど珍獣に対してワタルは昆虫に興味があった。
「お母さん、明日、先生のストライキで学校は休みなんだよ」
「ええ~?始業式があったばかりなのに先生がストライキするの?」
「公務員もストライキして良いことになったんだよ。先生たちね、明日から三日間、闘争するなんて言ってた」
「じゃあ、ワタルたちはどうするのよ?」
「自習でリポートを出すことになってるんだよ」
「ああ、それで大好きな生物図鑑を見てたのね」
「ボク、明日、豊島園の昆虫館に行くよ」
翌朝、ワタルがランチ代の千円を持って本牧満坂の家を出た。根岸線の山手駅から横浜へ行き、JR湘南新宿線に乗って池袋ヘ出た。池袋から西武線に乗った。吊り革に掴まったワタルが「豊島園駅前で、やっぱりカレーライスにしよう」などと考えていた。
「山城君」という声がした。ワタルが振り返ると黒岩先生だった。
「あれ、黒岩先生、ストライキじゃなかったのですか?」
「いや、ボクはまだ正式に教員じゃないんだよ」
黒岩傑(まさる)は新任の理科の先生である。黒岩は仮採用の期間だった。公立高等学校の教員採用は競争試験ではなく選考試験によることが定められていた。
「山城君、豊島園に行くの?」
「そうです。新種のヘラクレスオオカブトが入荷したってウエブに乗ってたんです」
「ああ、ボクも、あるものを捜しているんだ。良かったら、一緒に見に行こう」
「勿論ですよ。嬉しいです」
父親が早逝して、母親の手ひとつで育ったワタルは嬉しかった。二人が豊島園で降りた。
「山城君、まだ昼には早いから先に昆虫館を見ようか?」
教師と生徒がヘラクレスオオカブトを見たり、シジミ蝶が展覧されている熱帯昆虫館を見に行った。多くの珍種が入荷していた。デング熱の伝染体であるインドのヒトスジシマカ(一筋縞蚊)にワタルが魅せられていた。黒岩はシジミ蝶を凝視していた。
「先生、蝶々に興味があるんですか?」
「うん。だけどね、これはアマゾンに棲んでいる珍しい蝶なんだよ。アイスクリームを買って映画館ヘ入ろう。貴重なビデオを見せてくれるんだ」
スクリーンに樹皮を覆う飴色の蟻が映った。ワタルの肌が泡だった。黒岩を見ると表情が変わっていなかった。黒岩が解説に興味を持っているようだった。ブラジル、アマゾン河上流とサブタイトルが出た。どんよりとしたアマゾン河と黒いジャングルが映った。ドキュメントではない仮想劇である。探検用の白いヘルメットをかぶったアクターがジャングルの中を歩いていた。
――1961年、スプートニクが宇宙を飛んだ年のことだった。激しい風雨の中でアマゾンのジャングルを歩き回っていた英国人の昆虫学者、ジャック・デインジャーフィールド博士は、かつて見たこともない奇妙な光景を目撃した。雨に濡れた木の幹を、樹皮によく似た色の幼虫が這いまわって、何かの卵をさかんに食べている。「これは一体何なんだ?」と博士は思った。博士が注目したのは幼虫ではなく、その幼虫のお尻を前足でトントンと叩いている胴体が飴色で尻が赤黒い蟻であった。蟻の頭には触角が二つ付いていてそれを交互に動かしていた。だが蟻ではなかった。脚が六本ある蟻ではなく四本である。瑪瑙に見える目が大きく可愛らしかった。雌なんだろうか?デインジャーフィールド博士は、ロンドンの化石博物館で見た白亜紀の節足動物ではないかと思った。化石が生きている?どこをどう見ても説明がつかない。デインジャーフィールド博士はその節足動物をいくつか採取してイキトス研究センターに持ち帰ったが、すべて死んでしまった。そこで昆虫学者に連絡を取り、この得体の知れない節足動物は何なのか、誰か知らないかと聞いて回った。「目が似ていないが、ヒアリの新種ではないか?分からないという返事が大半でした」とデインジャーフィールド博士は振り返る。その後、博士は昆虫学者を募って再びアマゾンに戻ったが森は焼かれておりあの黄色い樹までが消えていた、、
銀幕に現在のジャングルが映った。蔦が絡む幹が緑色の樹が映った。何かの幼虫が群れていた。「う~む」と黒岩先生が言うのをワタルが聞いた。黒岩がスクリーンに映った樹の写真を数枚撮った。ワタルが「売店でスライドを買えば済むのに」と思った。ふたりは、夕方まで昆虫館を楽しんだ。外に出て駅前でカレーライスを食べた。
豊島園に行ってから一ヶ月が経った。黒岩傑は採用されなかった。神奈川県教育委員会は黒岩を高校の教員に不適任と裁断したのである。その理由は入国管理条例違反である。不採用の決定を北島会長が国立自然科学大学に伝えた。北島が、黒岩の担任だった川島生物学博士に「不採用の理由は電話では話せない」と言った。そこで川島教授に横浜の教育委員会に出頭して貰った。
「黒岩傑さんは、人物も良く、まじめで優秀な教員なんですが、神奈川県教育委員会は不適任と判断したんです」
「ほう?それはまたどうしてなんですか?」
「川島教授さん、アマゾンにゴールデン・ダイアブラという肉食蠅が生息しているのをご存じですか?」
「はあ?」
「生きた馬を食ってしまう悪魔の蠅です」
「それが黒岩傑君とどういう関係があるんですか?」
「教授さん、黒岩さんは、卒業する前年の冬にブラジルへ行ったんです。ペルーとの国境のアマゾンの上流です。ブラジルは夏季なんです。そのダイアブラ蠅の幼虫を持って帰ろうとして、入管で取り上げられたんです」
「私の生徒がそんな危険な蠅を?黒岩君は真っ裸にされたんですか?黒岩君は教師には絶対に向きませんね。本人には凶悪な犯罪を犯したという認識はあるんでしょうか?」
「いいえ、アメリカでは研究されており、研究のために持ち帰った自分には罪などないと言い張っています。幼虫は死んでいましたので釈放されたんです。ところで、黒岩さんの卒業論文は何だったんですか?」
「イキトスのジャングルの中で人間に似た蟻を見たと書いたんです」
「イキトス?アマゾンですね?人間に似た蟻ですって?」
「二本脚で立っていたそうですよ。節足動物のような手足に剛毛が生えており、頭に触覚を持つ蟻だったが日本語をしゃべったと教授会にリポートしたんです」
「ええ~?半人半獣は空想ですが、半人半虫ですか?それで写真はないんですか?」
「黒岩君は、カヌーでイキトスの港へ帰る途中、カヌーが揺れた瞬間、カメラをアマゾン河の泥流に落としてしまったと言ったんです」
「物証はないんですね?」
「全く、ありません。だが一緒に行った友人が証言しているんです。だが誰も信じていません。北島会長さん、仮採用中の黒岩君は生徒には人気はありましたか?」
「ええ、UFOの話が面白いと評判の良い先生でした。採用されないと聞いた生徒が泣いたんです」
「黒岩君はUFOを信じていたんですか?」
「信じていたなんて、UFO学会の日本会長なんですよ。教授さん、知らなかったんですか?」
「はあ?知りませんでしたが、黒岩君は昆虫学科の博士号を取るために再入学を希望しているんです」
「博士号のテーマは何なんでしょうか?」
「アンドロメダの蟻人というテーマなんです」
「そのアマゾンで見たという蟻人ですか?」
「そうです。アンドロメダ星雲に棲む蟻だそうです」
「はあ?黒岩傑さんは、先覚者なのか、または狂人かも知れませんね。このテーマは、また聞かせてください」
黒岩を採用しなかった北島会長は、宇宙から来た蟻人など信じなかった。北島はそれよりも日本に上陸したデング熱を心配していた。
夏休みがやってきた。クマゼミが本牧満坂の栗の樹に掴まって騒がしく泣いていた。ワタルの携帯が震えた。黒岩だった。
「お母さん、黒岩先生が群馬県立天文台を見せてくれるって。一晩泊まって行けっておっしゃってる。ボクね、この頃、天文学にも興味があるんだ。銀河系の外にも生物が棲んでいると先生が言ってる。水棲類よりも昆虫の可能性が高いんだって」
「ワタルは生物学者になるのが夢なのね?」
「ボク、黒岩先生が大好き」
「ちょっと変人だってね?」
「そんなことない」
ワタルが東京駅から上越新幹線に乗って上毛高原で降りた。一昔前には、「みなかみ」と呼ばれた温泉町である。山間に夕闇が迫っていた。黒岩先生がワゴン車で待っていた。天文台に一〇分で着いた。スキー場があちこちに見える。
「ワタル君、本当は冬の方がアンドロメダはよく見えるんだがね。夏の夜はシンチレーションが多いから反射望遠鏡でもショットが撮り難いんだ」
反射望遠鏡は日本で最大の一五〇センチである。一般には公開されていない。「黒岩君、元気そうだね」と作業服を着た猿沢技師が挨拶した。猿沢は中学時代の同級生なのだ。
「猿沢君、お久しぶり、これはね、山城ワタル君。ボクの生徒だったんだ。アンドロメダを見せてくれないか?」
「ああ、アンドロメダ銀河は宇宙探検の次の駅だからね。肉眼でも見えるけど反射望遠鏡で見よう」
「宇宙探検の次の駅ですって?」とワタルが叫んだ。だが、アンドロメダは二五〇万光年も天の川から離れている。一光年は約9.5兆キロメートルである。つまり、アンドロメダまで最新のイオンロケットでも一五〇〇年はかかるのである。アンドロメダ探検は天文学者の関心だが、予算が宇宙的な数字で、宇宙士の人権問題もあるので、ほとんどあきらめていた。それを聞いたワタルががっかりしていた。三人が望遠鏡の三方からアンドロメダを見ていた。
「ワタル君、キラキラと輝いているのは恒星なんだよ。つまり太陽。一兆個もあるらしいよ。薄紫の雲がプラネットなんだ。つまり地球のような惑星群。この星雲の中には何百もの天体がある。温度を計ると、M31という惑星には地球の白亜紀のような熱帯樹林があることが判ったんだ。黒岩先生から聞いたかね?」 望遠鏡から目を離した猿沢技師がワタルに聞いた。
「はい、黒岩先生は、アンドロメダ星雲のひとつから流星の雨が降るのが見えたっておっしゃっています」
「五十年前、ソ連のスプートニクが打ち上げに成功した時代に英国の天文台が写真を撮ったけど、最近になって、日本の天文学会は流星群ではないと否定したんだ。大学生だったボクと黒岩君は論文を書いて抗議したが、バカゲテいると一蹴された。ボクらは、現在もその流星群を追ってるんだ。それどころじゃない。太陽系に近付くとほとんどの流星は木星などの大気で燃えてしまったんだ。だがね、アマゾンの原住民がアマゾンの河口に蛍光灯のような光を見たって言ってるんだ。ボクと黒岩君は、イキトスに行った」
ここまで聞いたワタルの背中がゾクゾクしてきた。話しているうちに、真夜中になったので黒岩の本家に泊まった。農家だった。蚊帳を吊って寝た。夏なのに鈴虫が鳴いていた。翌朝、藤原湖へ行って鱒を釣った。
「黒岩先生、それで、その二本足で歩く蟻なんだけど、襲われなかったんですか?」
「こう言ったら、ワタル君はボクを狂人だと思うだろうね。背丈が一メートルぐらいだったな。蟻というか蟻人は流暢な日本語で話し掛けてきたんだ。それにね、雌の方は赤いビキニを穿いていたんだ。老いた雄はフンドシだったな」
「ええ~?」
黒岩が話した。
「ミスター・クロイワ、ワタシたちはあなたを良く知っています。ワタシたち、アンドロメダ蟻人はあなたを選んだからです。ワタシの名前は、メアスカリ。隣の人はワタシの父ババカロです。ワタシたちを恐れる必要はありません。ワタシたちは生物を食べません。共存関係にあるタイガー蜂の蜂蜜を食べて生きています」
「ミス・メアスカリ、あなたたちは人間なんですか?」
「いいえ、一億年前は人間だったんですが、蟻に進化したんです。ワタシたちが地球に来た理由は、アンドロメダのM31がスペース・スパイダーに襲われたからなんです。ワタシたちの外側の惑星に蜘蛛が棲んでいるんです」
「はあ?蜘蛛は蟻を恐れますからね」
「はい、蜘蛛は一匹で襲ってきますが、ワタシたちは数百匹の群れですから」
ババカロが写真を見せた。黒い縞のある赤い蜘蛛で体長が五〇センチはあった。
「問題があるんです。実は、その蜘蛛もこのアマゾンに棲んでいるんです。ミスター・クロイワ、ミスター・サルサワ、どうかワタシたちを助けてください」
「宇宙船で来られたんですか?」
「はい。いずれ、お見せしますが、今、出来ません。スパイダーが必死に捜索しているんです」
ババカロが、老いた蟻、女子供を入れて三千匹の仲間がいると言った。今、幼虫を増やす段階なんだと悲痛な表情で語った。
「黒岩君、これ、雲を掴むような話しだね。誰も信じないよ」
「スパイダーがあなたたちを殺したいという理由は何なんですか?」
「ワタシたちは、M31がスパイダ―に占領されると恐れました。そこで、隣の惑星に中性子爆弾を打ち込んだんです。蜘蛛の帝が死にましたから復讐するために追っかけて来たんです」
「どれぐらいの勢力なんだろうか?」
「彼らもどんどん卵を産んでいますから、ここ一年でアマゾン全域を支配するでしょう」
「ところで、あなたたちの宇宙船はそうとう大きなものなんですね?」
「いいえ、M31を出たときは、ワタシたちは体長2ミリの蟻でしたから。三〇年前に地球に着いてから大きくなったんですよ」
「そのスパイダーも同じなんですか?」
「そうです。目に見えないような蜘蛛なんですが、やはり地球についてから大きくなったんです。彼らは肉食なんです」
「それじゃあ、ビデオを撮って録音するしかない。それでも、われわれは狂人扱いされるでしょう」
「それで、先生、卒業論文を書いたんですね?」
「教授会に一笑に付されたよ。でもね、教授の何人かは手を顎に当てて考え込んでいた」
「先生、そのスパイダーと蟻は、戦争になるんでしょうか?」
「いや、それどころじゃないだろう。蜘蛛は何しろ肉食なんだ。人類も消滅すると思うね」
それを聞いたワタルの背中が寒くなった。少年は母親の富子が蜘蛛に食われる情景を想像して震えた。
「先生、教授会も日本政府も耳を貸さないんだから、有志を募って蟻を助けましょう」
「ワタル君、今の地球はね、誰も責任を取りたくない世界なんだよ。一〇〇億円持っている富豪でも、カネを出さないだろうね」
「自分が消滅するのにですか?」
「いや、蟻と蜘蛛の戦争を信じないからね」
二〇二〇年の十一月のある日、玄関に出たワタルが郵便受けを開けた。差出人のない封筒が一枚入っていた。スタンプは見たことがない文字である。ただ、イキトスと読めた。ワタルの胸が騒いだ。
――ワタル、ワタシたちアンドロメダの蟻人はあなたをよく知っています。あなたが高校一年生であることも知っています。ワタシたちは、ワタルにしか出来ないことをお願したいのです。ミスター・クロイワとミスター・サルサワを説得して、アマゾンに来てください。もうご周知のイキトスです。人類は滅びます。蟻も、蜘蛛も中性子爆弾を持っているからです。ご返事は要りません。水上機を借りて、十二月二十四日のクリスマス・イブの日暮れにイキトスの上流を飛んでください。着水地点はすぐに判ります。メアスカリ
ワタルが黒岩に電話した。
「それ、ボクも、猿沢君も受け取ったよ」
「どうして、ボクが指名されたんでしょうか?」
「あのね、大人は大人を信じないんだ。高校生の君ならブラジル政府も信じるとメアスカリは思っているんだろう」
「先生、じゃあ、行きましょう。お母さんには、クロイワ先生と蝶々の採集に南米に行くって言う」
黒岩傑、猿沢技師、ワタルの三人がアマゾンの河口にあるイキトスの空港に着いた。やはり、もの凄いジャングルである。ただ、南米は夏なのだ。アマゾンの河岸に名も知れない巨大な赤い花や花弁が厚い鬼百合が咲き誇っていた。ワタルが見ていると、赤い唇のように見える花にハチドリがとまった。花の真ん中から赤い舌が出てきた。舌がハチドリを捕まえると花がその口を閉じた。「どれも食虫花なんだよ」と黒岩が言った。ジャングルの西に太陽が傾いている。河岸のホテルだが大きな丸木小屋で天井に扇風機が回っていた。アマゾンを訪れたアメリカ人がおおぜい泊まっていた。三人がステーキを頼んだ。何かやたらに香辛料を使っている。美味かったが不思議な味がした。ウエイターが写真を持ってきた。亀なのか魚なのか判らない古代生物である。ウエイターが何か言った。
「精力の源泉って言ってる」と隣りのアメリカ人が黒岩に言った。桟橋に水上機が繋いであった。東から月が昇ってきた。満月だ。
「ワタル君、あれだな。出発は真夜中だ。ここから四〇〇キロ上流へ飛ぶんだよ」
「先生、動物図鑑で知ったんだけど、アマゾンはアフリカと違う。魚でも、豹でも、何世紀も進化していないんです。だいたい、歯が違う。ピラニアは怖いです。鰐も、亀も、鮫も恐竜に近いんですよ。ただ、頭が悪いから問題ないんです」
「問題は、蜘蛛と蟻か?」と猿沢が言った。
「そうなんだ。知能指数が相当高いからね。何しろ、アンドロメダから宇宙船で飛んできた連中なんだから」
黒岩がパイロットの右横の座席に着くとベルトを締めた。パイロットと三人を乗せた水上機が波を蹴立てると離水した。ワタルが目を瞑った。月光の中を飛んだ。マットグロッソと原住民が呼ぶ密林が黒々と広がっていた。二時間も飛んだだろうか?月が消えた。先方に閃光が走った。雷雨だ!水上機の前ガラスに大粒の雨がバタバタと当たった。パイロットがワイパーを動かしたが、全く視界が利かない。
「ミスター、クロイワ、心配、要らない。計器飛行で行けるからな」
だが、そのコンパスがグルグルと回っていた。「何だこれは?」とパイロットが叫んだ。パイロットが雨雲の上に出ようとスロットルを全開にして操縦桿を引いた。すると、水上機が逆さまになって高度を下げた。パイロットはようやく水平に戻したが、水上機がどんどん高度を下げている。アマゾンの河面が見えた。パイロットも、三人も必死になって脚を踏ん張っていた。般若心経を読む声が聞こえた。猿沢だった。この水域はピラニアの天国なのだ。あわや!自分もアマゾンの一部になるのかとワタルが思って目を瞑った。すると、突然、機首が持ち上がって水平になった。
「俺たちは操縦されているんだ」とパイロットが叫んだ。蛍光灯のような光が見えた。豪雨でしぶきが河面に立ち上がっている。直径が一キロメートルはあった。蛍光の真ん中に黄色い渦が巻いていた。四人の乗った水上機がその真ん中に着水した。プロペラが勝手に停まった。パイロットがコックピットを開けた。これ以上、静かな世界はないと思うほど、あたりは静まり返っていた。蛍光がなければ真っ暗闇である。「ワタル」という女性の声がした。四人が声の聞こえた方角に目を凝らした。藻がびっしりと浮かんでいるばかりである。
「ワタル、あなたたちにはワタシたちは見えないのよ。今、カプセルを送りましたから乗ってください。地底のワタシたちの神殿にご案内します」
蛍光の中にブクブクと泡が立ったと思うと、卵の形をしたカプセルが浮かび上がった。ハッチが開いた。触覚を振り振り蟻が出てきた。「クロイワさん、ババカロです」と蟻が言った。四人は長いトンネルを通ったように思った。何度も扉を開けては閉める音がした。カプセルが停まった。ババカロがハッチを開けると何百燭光もの電灯の中に神殿が聳えていた。神殿はまだ完成していないらしく、蟻の労働者が働いていた。学校も、託児所も、病院もあった。赤いビキニを穿いた一匹の蟻がワタルに近着いてきた。
「ワタル、ワタシがメアスカリ。今夜、女王が歓迎会を開きます。あなたたちが食べる食料は沢山あります。ピラニアと果物なんですが」
メアスカリは触角に白いリボンを結んでいた。地位を表すのだろうか?人間なら十代か?メアスカリがその大きな瑪瑙に見える目でワタルを見ていた。女王蟻は天井に近い階段の上に作られた黄金の椅子に座っていた。女王は真ん中に大きなサファイアが嵌められたダイアモンドの王冠を被り、手にバトンを持っていた。女王が横にバトンを振ると宴会が始まった。宴会が終わるとババカロが立ち上がった。ババカロは将軍のようである。
「ミスター・クロイワ、ワタシたちアンドロメダの蟻は絶滅の危機に面しています」とババカロは言うと、兵隊の蟻に鉄格子の箱を持って来させた。体長が五〇センチぐらいの赤い蜘蛛が一匹入っていた。
「これが、アンドロメダ星雲のスパイダーなんです」
蜘蛛がもの凄い目でババカロを睨みつけた。
「殺してしまえ!」
「いや、こいつは、王子だ。こいつを殺すと全面戦争になる」
「それで、ババカロさん、ボクらに何が出来るんですか?」
「クロイワさん、蜘蛛は三年ごとに外皮を着がえるんです。新月から衣替えが始まるんです。そのときに奴らの巣に火を着ける考えなんです。だが、問題があるんです。奴らは巣をアマゾンのジャングルの土の中に作っているんです」
「いくつもということですか?」
「そうです。穴は三〇〇はあります。そこに、二万匹はいます」
これを聞いたワタルが日本へ飛んで帰りたくなった。ババカロが蜘蛛と交渉してくれと黒岩に言った。
「王子と交換っていうわけだね?」
「復讐をあきらめてくれれば良いのです」
「地球に共存するんですか?」
「いいえ、わかりません。蜘蛛たちは、われわれ蟻の絶滅を狙っていますから」
黒岩と猿沢が決心した。密使となって蜘蛛大王と交渉するのだ。だが、人類はどうなるのか?アンドロメダの蟻が地球にいる限り、蜘蛛も住み着く。黒岩も、猿沢も両方を亡ぼすしかないと考えていた。だが、どのようにして亡ぼすのか?そのとき、ワタルが黒岩の肘を突いた。
「黒岩先生、蜘蛛の天敵は蜂なんですよ。しかし、五〇センチもの蜘蛛を殺せる蜂など地球にはいない」とワタルが二人の科学者に言った。
「あっ、そうだったね」
「先生、蜘蛛を小さくする方法はないんですか?」
「うん、ババカロに聞いてみるよ」
ババカロの話は恐ろしいものだった。ババカロが、蜘蛛が処女の蟻を食うと元の姿に戻ると言ったのである。「処女?」ワタルがメアスカリを想った。少年は、メアスカリに惹かれている自分に驚いていた。
結局、その通りになった。赤蜘蛛たちは、アンドロメダに帰りたくなっていた。蜘蛛たちは蜘蛛大王の王子と処女蟻一〇〇匹を要求したのである。女王蟻が人身御供を差し出すことを拒絶した。だが、メアスカリと一〇〇匹の処女蟻は、自らが犠牲になることを申し出た。
「ワタル、お話しがあるの。ワタシと散歩に行かない?」
二人がオオシダの茂る河畔を歩いた。二人は手を繋いでいた。
「メアスカリ、何とか逃げることはできないの?」
「ワタル、蜘蛛がワタシたちを食べた後、5ミリのサイズになった蜘蛛たちを蜂が襲うことになってるのよ」
「でも」
メアスカリの大きな目から涙がこぼれ落ちた。ワタルがメアスカリを抱きしめた。メアスカリがつま先だってワタルに接吻をした。蜂蜜の甘い匂いがした。
蜘蛛たちは流線形の潜水艦に乗ってやってきた。甲板に並んだ蜘蛛たちは、どれも電子銃を手に持っていた。蟻も同じだった。1〇〇匹の処女蟻が連れて行かれた。「ドント、ウオーリー」とワタルにメアスカリが手を振った。黒岩、猿沢、ワタルが目を拭った。潜水艦が水面から姿を消した。残った蟻たちがドクターの前に並んだ。ドクターが霧を吹きかけると蟻が2ミリのサイズになった。3〇〇〇匹の蟻が列になって宇宙船に乗り込んだ。六本のロケットが噴射すると宇宙船がゆるゆると上昇した。三人の日本人とパイロットが手を振った。四人が乗り込んだ水上機が河面を滑走して離水した。
神奈川県教育委員会の北島会長が頭を抱えていた。夏休みに豊島園昆虫館に行った横浜本牧高校の生徒2〇人のうちの3人がデング熱に感染したのである。
「黒岩先生が引率されたんですね?」
「はい、そうです。インドから入荷した蚊なんです。ガラスのケースに入っていましたから安全だとみたんですが、日本の藪蚊と配合したらしいのです」
「山城ワタル君が、最も重症なんだって?」
「そうなんです。七日間も高熱が続いたんです。今朝、今里熱帯病研究所の病室を訪ねました。山城君は平熱になり、本人の意識は、はっきりとしているんですが、何か不思議なことを言うんです」
「例えば?」
「私が本牧高校の教員に不採用になったとか、、クリスマスに、群馬県天文台の猿沢技師とボクと山城君の三人でアマゾンへ一緒に行ったとか、、アンドロメダの蟻人や蜘蛛と会ったとか、、」
「それ、デング熱特有の幻覚だね」
「ええ、でも、とても描写が精緻なんです」
「お母さんの富子さんが、ワタル君は精神病じゃなければいいがと言っていました」
「復学させるんですか?」
「ええ、全く、問題がないんですからね」
ワタルが横浜本牧高校に戻ってから一月が経った。その土曜日の朝、郵便受けの音がカタンとしたので、玄関へ行って郵便受けを開いた。ピンクの封筒に入った誕生日カードであった。今まで誕生日カードを受け取ったことがないワタルが不思議に思った。差出人の名前がなかった。ワタルの胸が騒いだ。カードを開いた。
――ワタル、ワタシたちアンドロメダの蟻は、今朝、冥王星の横を通過して銀河を横切っています。三〇〇〇匹の蟻はみんな元気です。ワタルは、どうしてワタシが生きているんだと不思議でしょう?あの蜘蛛の潜水艦に乗ってアマゾンの水面下に消えた一〇〇匹の蟻たちは、クローンなんです。蜘蛛たちは遺伝子が同じなので気が着かなかったのです。蟻を食べた蜘蛛たちが5ミリのサイズになったんです。そこへ、タイガー蜂の大群が襲い掛かって、蜘蛛たちを皆殺しにしました。2ミリとなったワタシは、ワタルが見ていた宇宙船に乗っていたのです。ワタシはワタルを愛しています。是非、アンドロメダに来てください。ワタシは、いつまでも、ワタルを待っています。メアスカリ
―完―
伊勢平次郎爺さんが書いたSFです。みなさん、感想をください。そして拡散をお願します。出版社の注意を惹きたい。伊勢
10/25 | ![]() |
あきらかに世界経済は後退する |
10/24 | ![]() |
中国は無法国家であるが日本の敵ではない |

日本国と中華人民共和国との間の平和友好条約
日本国と中華人民共和国との間の平和友好条約は1978年8月12日、北京で日本国と中華人民共和国との間で締結された条約である。一般に日中平和友好条約で知られる。1972年の日中共同声明を踏まえて、日本と中国の外交関係の発展のために締結された条約である。
要旨
内容は1972年9月に国交回復した時の日中共同声明の文面を基本的に踏襲したものとなっている。第1条で主権・領土の相互尊重、相互不可侵、相互内政不干渉が記述され、第2条で反覇権を謳い、第3条で両国の経済的、文化的関係の一層の発展を述べて、第4条でこの条約の第三国との関係について記されている。国交回復から6年が過ぎてから平和条約交渉が妥結したのは、「反覇権」条項と「第三国」条項で最も論議を呼んだからである。
日本は長い目で中国と付き合わなければならない
チャンネル桜や産経新聞は、中国敵視の政治宣伝を流しているが、間違いです。これを伊勢が言ったところで、この自称保守という人種が改めるわけではない(笑い)。中國は尖閣諸島に押し寄せたり、南シナ海に人工島を作って軍事基地にしたり、国際社会から非難際されている。この無法行為と日中友好関係を切り離さなければいけない。中國は実はアメリカを恐れているのです。アメリカは日本にとっても危険な国です。とにかく、好戦的でわがままだからね。日米同盟は日本にっとっても、アメリカにとっても相互の安全保障に不可欠な条約なんですが、主権は日本にあるわけだから、対等な関係が望ましいのです。現状では対等ではないです。伊勢
10/21 | ![]() |
日本の美徳、沈黙は金か? |
10/15 | ![]() |
ハルマゲドン |
10/13 | ![]() |
在日米軍がいなければ日本は侵される |
詳しい記事は無用ですね。中國とロシアの日本領空侵犯または領空侵犯の恐れがあるため空自がスクランブルする。だから。中ロは仮想敵国なんです。潜水艦のEEZ侵犯もある。空自の戦闘機はアメリカ製かライセンスで作る。だが、米空軍基地から米軍機がスクランブルはしない。それは仕方がない。日本は米国領ではないから。だが、何故、侵犯を続けるのか?1)日米同盟への嫌がらせ~2)日本の防空戦力をテスト。南北朝鮮も日米の仮想敵国です。「日米同盟はフェイク同盟」と言っても、現在のレベルを維持して、さらに強化することが必要です。
日本の防衛費は足りない

その原因がこの二人ですね。トランプは防衛費増加を必ず要求する。そのトランプに安倍晋三は取りすがっている。拉致被害者が帰国することはないです。米朝会談は見せかけだから。尖閣有事となれば、自衛隊に戦わせるでしょうね。日本は自衛隊を大きくするしかない。その正念場が来ている。伊勢
10/11 | ![]() |
東京大空襲、広島長崎の原爆投下は国家権力上げての犯罪であった |
YouTubeの時代、アメリカの多くの若者たちが、「戦争を終結するために原爆を落とした」と聞いていたことが嘘であると気が着いた。アメリカのメデイアは声を揃えて嘘をテレビで流したわけです。米国政府は、それをよしとして、原爆投下の正当性を言い続けてきたのです。最も、卑怯なのが日本政府なんです。昭和天皇は「原爆は致し方なかった」などとテレビで言ったのです。これは、アメリカの主張を認めたということです。伊勢は、日本民族大虐殺を認めることができない。現在のアメリカの青年はほぼ真実を知っています。だが、現在でも57%のアメリカ人が原爆投下は正しかったと言っている。日本政府は黙りこくっているから、「それが証拠だ」となりますね。現在の日米は良い関係です。だから、真実は述べておかなければならないのです。伊勢
日米軍事同盟はフェイク同盟
と訴えることにしたのです。原稿が遅れているのは、思ったよりも難しいからなんです。何しろ、旧約聖書の創世記を批判するわけですから。キリスト教徒全員が立ち向かってくる。だけど、日本人は保守もサヨクも誰もやらない。伊勢は77歳となった。自分の任務だと思うようになった。伊勢
もう少し寄付をお願したいのです
アメリカ人の編集者にカネがかかるのが理由です。キンドルに上載するプロセスは時間のかかるものなんです。伊勢
A) 振込口座
1)金融機関 みずほ銀行・上大岡支店・支店番号 364
2)口座番号 (普通) 2917217
3)口座名 隼機関 ハヤブサキカン
B) 郵便局口座
1)口座番号 10940-26934811
2)口座名 隼機関 ハヤブサキカン
日米軍事同盟はフェイク同盟
と訴えることにしたのです。原稿が遅れているのは、思ったよりも難しいからなんです。何しろ、旧約聖書の創世記を批判するわけですから。キリスト教徒全員が立ち向かってくる。だけど、日本人は保守もサヨクも誰もやらない。伊勢は77歳となった。自分の任務だと思うようになった。伊勢
もう少し寄付をお願したいのです
アメリカ人の編集者にカネがかかるのが理由です。キンドルに上載するプロセスは時間のかかるものなんです。伊勢
A) 振込口座
1)金融機関 みずほ銀行・上大岡支店・支店番号 364
2)口座番号 (普通) 2917217
3)口座名 隼機関 ハヤブサキカン
B) 郵便局口座
1)口座番号 10940-26934811
2)口座名 隼機関 ハヤブサキカン
10/08 | ![]() |
真実は取り消すことができない |
このNHKの番組は原爆投下の真の目的を記録を負って解説している。伊勢が主張している「キリスト教徒白人の日本民族を絶滅させる」ことが目的だったのです。アメリカの主張は「戦争を終わらせるため」「米兵と日本人の命を守るため」と今も変わらないのですが、この番組を観ると、そこには全く違った姿が見えてくる。ナチスドイツに民族浄化の目的でガス室に送られたユダヤ人たち。ユダヤは戦後もブラジルの密林に隠れていたナチスの戦犯を追った。アンネの日記はユダヤ人の総資本で世界に訴えた。伊勢も中学生のときに銀座で観た。残念でやり切れないないのが日本人の選択です。一般市民が焼夷弾や原爆で生きたまま焼き殺されたんです。現在でも、ユダヤは、「ホロコースト」と世界中に訴えていますね。日本人は、経済援助と引き換えに沈黙することを選んだ。現在でも、世界に訴える民族運動がないのです。だ・か・ら、伊勢は、、
日米軍事同盟はフェイク同盟
と訴えることにしたのです。原稿が遅れているのは、思ったよりも難しいからなんです。何しろ、旧約聖書の創世記を批判するわけですから。キリスト教徒全員が立ち向かってくる。だけど、日本人は保守もサヨクも誰もやらない。伊勢は77歳となった。自分の任務だと思うようになった。伊勢
もう少し寄付をお願したいのです
アメリカ人の編集者にカネがかかるのが理由です。キンドルに上載するプロセスは時間のかかるものなんです。伊勢
A) 振込口座
1)金融機関 みずほ銀行・上大岡支店・支店番号 364
2)口座番号 (普通) 2917217
3)口座名 隼機関 ハヤブサキカン
B) 郵便局口座
1)口座番号 10940-26934811
2)口座名 隼機関 ハヤブサキカン
10/07 | ![]() |
アメリカを変えたベトナム戦争 |
10/05 | ![]() |
日米軍事同盟はフェイク同盟 |

沖縄に米軍基地がなければ、中国に取られることは明白です。米軍基地が三沢空軍基地から嘉手納まで展開していなければ、ロシアは悠々と北海道を取りにくる。伊勢は在日米軍基地の支持者なんです。では、何故故に「日米軍事同盟はフェイク同盟」などと傷付ける言い方をするのか?それは、、
日本は同盟国の責務を果たしていない

自国の防衛をアメリカに頼っているからです。さらに、「防衛費を少なくとも2%に上げてくれ」と悲鳴を上げるアメリカの懇願に耳を貸さないからです。安倍晋三は「憲法を改正する」と言い続けてきたが、出来そうもない(笑い)。さらに、憲法の改正と防衛費を上げることは無関係なんですね。これらの日本政府の欺瞞をアメリカ軍部は見抜いています。つまり、同盟国の日本を信用していないわけです。だから、トランプはクチでは「拉致被害者の解決に協力する」とは言っているが、そんなつもりは心にないのです。それどころか、イザ、尖閣有事のとき、米軍は出動するか?答えは、「自衛隊が充分に死傷したら出してもいい」というところだと思うね。中國軍は尖閣を取っても、沖縄には上陸しないからなんです。ということは、「アメリカ兵を死なせたくない」と米軍は思っている。ここは原爆投下と同じ考えです。米国内のコンセンサスでも、「日本人はズル賢い」ですからね。中國はタイミングを計っていると思う。尖閣を取り巻く形に持っていって、米軍の出方を観察する。安倍と麻生が日本を亡ぼす。伊勢
日本を亡ぼすキツネとタヌキ

10/05 | ![]() |
東京大空襲に見る白人の優越感 |
毎年、三月になると、放送されるNHKの東京大空襲です。確かに市民無差別大虐殺です。八月の広島長崎原爆投下。無条件降伏を飲んだ日本。戦争責任を回避した昭和天皇。日本政府は戦争の集大成もせずに終戦から73年が経った。だが、東京大空襲~沖縄地上戦~広島長崎への原爆投下に関して、アメリカから正式な謝罪はないばかりか、「俺たちは正しいことをした」とこじつけた正当論が大手を振って歩いている。大学生たちは「市民を虐殺して正当化できるわけがない」と言っていますね。日本政府も、国民も沈黙したままです。この意味するところは、日本人は、暴力に屈したということです。ステイーブンス陸軍長官が恐れた通り、日本人の大半は反米なんです。一方で、原爆投下はアメリカが日本の核保有を全力を挙げて阻止する理由です。つまり万が一の報復を恐れているのです。非核三原則は、沖縄返還や防衛費を上げないためのお土産なのです。このため、アメリカは日本に無理を言えない。だが、アメリカを「同盟国だから」」と信用してはいけない。貿易格差も日本が有利なんですから、トランプの要求をその場ごまかしでかわせばいい。日米同盟は経済上の都合の良い看板です。朝鮮戦争でも、ベトナム戦争でも日本は儲けた。こういう意味では、自民党はしたたかです。だが、アメリカは朝鮮半島で戦争を始める可能性があります。日本はアメリカの手先となってはならない。
伊勢は、在日米軍基地の保全修理を請け負う会社の顧問です。精々、この程度の国防事業に手を貸して、ドルを吸い上げることが祖国日本にとって良いと思うからです。絶対にアメリカの暴力に屈していけない。伊勢
10/02 | ![]() |
基礎医学のフロンテイアたち |

スウェーデンのカロリンスカ研究所は10月1日(現地時間)、2018年のノーベル医学・生理学賞を、京都大学 高等研究院の本庶佑 特別教授ならびに米テキサス州立大学のJames P. Allison(ジェームズ・アリソン)博士に授与すると発表した。がん治療の第4の手法として期待されている免疫療法を確立した功績が評価された。(AP)

本庶氏が語った研究の原動力 ノーベル医学・生理学賞
10/02 00:43
ノーベル医学・生理学賞が発表され、がん治療に、新たな道を開いた、本庶佑京都大学特別教授(76)の受賞が決定しました。その本庶氏から、椿原慶子キャスターが直接、お話を伺いました。
「ノーベル賞受賞おめでとうございます」
「ありがとうございます」
研究を続ける、原動力・心構え
「原動力というのはね、小さい時に、野口英世の伝記を読んで、非常に強い感銘を受けたということが1つありますし。それから、医学部にいる時に、同級生が、がんで死んだとかね、いろんなことがあります。それから、何よりも大きなことは、わたし自身が、物事を突き詰めて考えたりという好奇心というのが、わりかし強かった」
野口英世の伝記にどんな感銘?
「ご存じのように、野口英世というのは、非常に逆境で、普通の教育すら受けられるかどうか、わからないというところで、困難を破って、そして、医師の資格を取って、さらに、単身で、アメリカに押しかけのような形で行って、そういう非常に強い意志と行動力と能力があったと。それは、非常に、わたしは感銘を受けました。わたしの家族には、医師の人が多かった、おやじ自身も、大学の医学部の教授でしたし。それから、何よりもね、わたしは、人に使われることが好きじゃなかったので。自由にやりたい、勝手にやりたいと、そういうことで、医者とか、弁護士とか、そういう資格がある方がいいんじゃないかなと思ってました」
日本の基礎医学分野の発展に必要なことは?
「まず、重要なことは研究費です。基礎医学に、もうちょっと研究費を出す。どこに、大きな種があるかは、わかんないんですね。だから、たくさんのことを試してみないといけない。第2は若い人、なるべくエンカレッジ(激励)するということです。そう言いながら、僕がずっと大学に残っているというのは、大変矛盾していますけれども、なんとか、そういう環境ができればいいなと思ってます」
(FNN)