2015/09/21 (Mon) 「勝つ」という精神力
japan vs SA 9.19.15

日本の青年を応援したい。「勝つ」という精神力があるから勝ったと思う。コーチも素晴らしいひとのようだ。伊勢爺が「憲兵大尉の娘」を書く理由が「日本は決して負けたのではない」という国民が持つべき精神を述べたいからだ。伊勢平次郎 ルイジアナ







連載小説「憲兵大尉の娘」第二部(46)

表紙憲兵大尉の娘_convert_20150830145240


(46)

kenpei officer


日曜日の朝が明けた。長谷川が起きると、飛鳥が寝巻き姿で南部とトカレフを点検していた。

「少尉、パンを食え。食ったら、ハバカリへ行っておけ」とコッペパンと牛乳を一本くれた。

その後、体操をした。そして、憲兵将校の三式制服に着替えた。幅の広い革のベルトである。飛鳥が手榴弾を下げている。飛鳥がトカレフを手渡した。長谷川が点検した、、

フロアに降りると、フロントがびっくりした。飛鳥が靴音高く、となりの蛇口菜館の玄関を上がって行った。ドアは開いていた。中に入ると、「なんだ、なんだ」と大声がした。奥に座っていた何原竜蔵が立ち上がって、テーブルの上の自動小銃を取って構えた。飛鳥が南部8ミリを三発撃った。南原がテーブルと一緒に倒れるのが見えた。ガードが6人居た。その一人が「長谷川、お前か?」とわめいた。よく見ると、青森連隊で会った蒲田中尉である。鎌田が奥へ逃げた。残りの上海ギャングが一斉にピストルを抜いた。飛鳥が手榴弾をベルトから外した。だが、長谷川のほうが速かった。長谷川が教えられたように、4秒にセットして、アンダースローで床に放った。手榴弾がテーブルの下をゴロゴロと転がって行った。ふたりは外へ走った。「ど~ん」という破裂音が聞こえた。フォードが近寄って来た。犬養大佐が準備したものだ。すでに部屋は引き払っていたので、将校トランクも頭陀袋もフォードの中にあった。

「ちょっと待ってくれ」と飛鳥が武官に頼んでいた。飛鳥は、オリンパスを掴むと、蛇口菜館に入って行った。「記念写真一発撮ってきた。みんな、仲良くひっくりかえっておった」と笑った。飛鳥が右手に手提げ金庫を持っていた。

三人は、陸戦隊の司令部に向かった。半円形のドライブウエーに入った。いわゆるガリソンである。入り口で憲兵が憲兵将校を武装解除した。犬養大佐と海軍士官が待っていた。

「ごくろうさんでした」

「アジトは、どうなりましたか?」

「南京路のアジトは、昼から大宴会をやっとった。午後から総長賭博を会長しておった。小倉小鉄組~山口三谷組~広島海竜組の親分衆が集まっておった。姑娘にアメリカズロース穿かせて舞台で踊らしておったよ」

「それで、一網打尽なんですか?」

「いや、皆殺しにした。姑娘は真っ裸で逃げた」

「これは事件になりますか?」

「ならんよ。第六師団の命令なんだからね」

「さて、われわれは住家を失くした」と飛鳥が笑った。

「今夜は、ここへ泊まって行け」

二人はまた美味いメシを食った。日本海の魚~銀しゃり~赤だし~白菜の漬物、、

 将校宿舎のひと部屋が与えられた。長谷川が電信機を取り出していた。カレンに電報を打った。

――任務完了なれども、先見えず、、上海ははなはだ不穏なり、、長谷川道夫。

                                          
shanghai consulates district

この上海のマップをもう一度見てみよう。領事館が並ぶ共同租界と北京路がある地区との間に運河がある。点線は路面電車である。「チンチン」と鐘を鳴らして走る。南に南京路がある。どの地区もゲットーではない。

「南京路へ帰ろう」  

海軍武官がフォードを運転して上海駅の前で停めた。二人は支那服に着替えていた。大佐から貰った土産の飛び魚の日干し、落花生、名酒剣菱を持って降りた。西へ歩いた。西へ行くほど貧民街になっていた。天守閣のある旅館があった。竜宮城迎賓館と金文字の看板がかかっている。

「ここにしよう」

「恐ろしく汚い竜宮城ですね」

「ま、そう言うな。店は汚いほど料理は美味いぞ」と大尉がまた笑った。だが、部屋は清潔であった。南京虫もゴキブリも居ないだろう。向かい側に公園がある。フロントが「植物園だから散歩にいいですよ」と勧めた。

池がある~太鼓橋がある~蓮が水面を覆っていて、巨大な錦鯉が泳いでいる。草木多い。公園の作業員が、梅~桜~桃の花~カイドウ~ハナズオウ~牡丹~モクレン~つつじと順番に咲くのだと話した。川柳と木楢が最盛期で青々と茂っていた。紅紫色の釣鐘型の花を下向きに沢山付けて実に可愛い。

飛鳥も長谷川も沈黙していた。新緑の杜の中で話すことがなかったのである。飛鳥が考え考え手帳に何か書いていた。見ると、漢詩であった。部屋に戻る前に階下でメシを食った。酢豚が美味かった。





「大尉殿、われわれはハルピンに戻るのですか?」

「いや、武漢へ行く。きみは武漢三鎮を知っているか?」

「いいえ、全く無知であります」

「明日は6月だが、日本軍は武漢へ出動する。日本史上最大の作戦になる」

「はあ?どうやって武漢に行くのでありますか?」

「軍艦出雲に乗って行く」と長谷川を驚かした。

「何故、われわれ憲兵が武漢へ行くのですか?」

「観戦だ。見て来いと新京の関東軍なんだ」

「蒋介石は海軍がない?」

「ゼロだよ」

「機雷もない?」

「ない。すでに、砲艦栗が先発した」



砲艦「栗」も日露戦争以来の沿岸砲艦である。


飛鳥と長谷川が戦艦出雲の艦橋に立っていた。艦長の岡大佐と航海士が横に立っていた。

「あれが姉妹艦の盤手である」と航海士が長谷川に話した。出雲は装甲型巡洋艦第一号なのだ。戦艦ではない。日露海戦で活躍した。乗組員は672名~速度は20ノット。日露以来、兵装を改良して来た。連射砲~速射砲~機関砲など36門を装備している。巡洋艦の特長は現場へ速く着くことである。


shanghai bukan map


「南京まで300キロメートル~武漢まで810キロメートルである。出雲の航速は20ノット(37キロ)である。さらに揚子江を遡上するために、航速は、時速30キロと見積もっている。石炭船が続いておるが、輸送船団はさらに遅いのだ」

「すると、武漢には何日かかるのでありますか?」と長谷川が訊いた。飛鳥はただ聞いていた。

「湾曲部があるので、36時間と見積もっている」

「意外に速いのですね」と飛鳥が感心していた。

「陸軍は?」

「北支那方面軍は、2日前に出たが、南京までは、戦車は鉄道で南京から船で運ぶ。歩兵はトラック。途中で戦闘がなければ、ほとんど同時に着くかな」

飛鳥と長谷川が船室に帰った。

「大尉殿、もう一度訊きます。われわれは、観戦だけなのでありますか?」

「出雲~盤手~朝日には従軍記者が乗っている。記者の役目はな、勇ましく、美しい日本軍を記事に書くことなのだ。歩兵も海兵も勇ましいだろうが、美しいことはない」

「はあ?」

「われわれの任務は、実際の戦闘を記録して新京の関東軍に報告することだ」

「何故、関東軍は事実を知りたいのでありますか?」

「うむ、この武漢三鎮作戦は日本の大きな賭けなのだ。戦果がおもわしくなければ、満州に影響するからだ。もう影響しとるわな」

「山田乙三指令官と北支方面軍の大半が満州の広島第五師団や上海の熊本第六師団ですからね。満州が手薄になるのをソ連は待っている」

「少尉、その通りだよ」

夕日を見に艦橋に出た。揚子江の水は黄色く濁っていた。

「岡艦長殿、電信を打っても宜しいでしょうか?」

「出雲は巡洋艦だ。常に電信を使う。どこに打電するのかね?」

「ハルピンの杉原領事であります」
             
――カレン、元気にしてますか?飛鳥大尉とぼくは、今、巡洋艦出雲に乗って、揚子江を武漢へ向かっている。艦長が「日中戦争の最大の作戦だ」とおっしゃっている。武漢三鎮攻略戦と言う。兵員:350,000(9個師団)~航空機:500~艦船:120。杉原領事は、すでにご存知と思う。あと、30時間で武漢に着く。揚子江の水は濁っているが、夕日が美しい。飛鳥大尉も、自分も極く元気です。返事は上海日本領事館付け磐田武官に打ってください。磐田さんが出雲のコード番号を知っておられる。

カレンは何故か涙が出て仕方がなかった。そこへ、領事が入って来た。カレンを見て、「長谷川少尉か?」と訊いた。そして、暗号解読練習生の池田良一を見た。

「カレン、外でランチを食べよう」と誘った。武官が運転するダットサンが大和ホテルに着いた。「きみもどう?」と武官を誘った。

「は、お供させて頂きます」

三人は個室に入った。カレンが好きなものを注文した。

「ワインを飲んでもいいでしょうか?」

「勿論だよ。きみは何か飲む?」と武官に訊いた。武官はビールを頼んだ。飲み物が来る間、カレンが長谷川の電報を話した。若い武官が緊張していた。

「カレン、あの池田ね、電報を見せても話してもいけない」

「ハイ、でも領事さんが決めたのでしょう?」

「君たちにだけ話す。池田はコミンテルンのスパイだ。つまりソ連の間諜なのだ。逆に利用する考えだ」

「説得して日本側に着ける?」

「いや、一旦、共産主義者となると、命を落としてもソ連のために働く。日本がそれほど憎いのさ」

「わたしは何をすればいいのですか?」

「普段通り暗号教室をやってくれ。カレンが教える暗号は偽モノなんだ。肝心なところが逆に伝わる仕組みなんだ」

「わたしも、おかしいなと思ってたんです」とエクボを見せて笑った。

「監視カメラと録音機が設置されている」

料理がどんどん運ばれてきた。茶碗蒸しが出た。カレンと武官が目を輝かせていた。領事が「乾杯」と言った。

                             *

「上海湾が肛門で、揚子江は大腸のようなものだ」

「はあ、その大腸の中を大日本帝国艦隊が武漢三鎮の胃袋まで行くわけですね?」と珍しく長谷川がジョークを言うと、美濃の斉藤道三が大声で笑った。そこへ、一等水兵が「夕飯です」と呼びに来た。

                            ~続く~


海外広報に、ご献金を頂きたい

日本人で、伊勢一人がブルームバーグ紙で論戦している。中国経済が劣化してから中国人の書き込みがゼロとなっている。いかに習近平が窮地に陥ったかがよく判る。日中貿易を見直すときである。

A) 振込口座

1)金融機関   みずほ銀行・上大岡支店・支店番号 364
2)口座番号   (普通)    2917217
3)口座名    隼機関   ハヤブサキカン

B) 郵便局口座

1)口座番号  10940-26934811
2)口座名    隼機関   ハヤブサキカン


8月30日、MIZ・TAKさまから、20、000円~WA・EIさまが今月も(毎月)、1000円の寄付を下さった。この方々は何年もの期間、伊勢を応援してくださった。たいへん感謝しています。


新藤義考さんにメールを出した

[ メッセージ ]
隼速報の伊勢です。1941年、新京で生まれました。一家七人は終戦一年前に日本へ帰りましたが、兄三人は学徒出陣と予科練へ行きました。みな生還しました。「満州を掴んだ男」が現在集英社の手にあります。出版はわかりません。応援してください。ブログで「憲兵大尉の娘」を連載中です。是非、ご覧ください。

comment

ぽん

うるせえぞ。仕事に就け。「知らぬ他人をくさす態度」というのは不幸な証拠なんだ。伊勢
2015/09/22 18:15 | 伊勢 [ 編集 ]

ヤレヤレ、この前は「男性の女性化」とか書いてたのに、手のひら返しが凄いねw
因に、羽生も「勝つ」という精神力があったからこそ、金メダルを取ったのではなかったのかね?
2015/09/22 17:54 | ぽん [ 編集 ]

>現代の日本人に欠けているのは信仰に根ざした勇気です。
 わが国の問題点はここでしょう。もともとわが国には西洋や支那のような信仰の元となるものは明快にありませんでした。あったとするなら仏教ですがこれとても奈良時代に支那を経由してわが国来ましたがその入り方が、ローマ帝国におけるキリスト教とは違います。逆でした。ローマでは民衆から上層部へとすすみましたが、わが国は上層部から民衆へとすすみ、鎌倉仏教となったわけです。
 この程度の基本知識は高校くらいで教えてくれないと、自国の歴史にもとづいた、議論や意見交換はできません。
 私は勝ってきままに、本をよんで<ふーん>と考えながら、多少はしるようになっただけで、それでもきちんとした知識を教えてくれていたならと思うことしきりです。時間の無駄が多かったからです。個人的にはわが国の学校教育など信用してはならないと判断しています。理数の教育でも変だと見ています。現代小中教育で、<考える教育>というものがありますがあんなものする必要はないと思う。特に理数系は必要ないとおもう。

 明治以降それ(信仰昔の言葉で言えば信心の消滅)が進み、大東亜戦争の元の一部もそれがあり、敗戦が決定しましたが、その敗戦で失われたものと失われなかったものがあり、象徴的に言えば明治憲法でしょう。専門の法学者ですらあっさり捨てています。あれだけ帝国憲法を護持していたにもかかわらず。
 国の仕組みとしての徴兵制がありましたが、国防から徴兵が必要とは国民が考えたのではなく、ちょうど仏教のように、上から各市町村の青年へ半分苦役として、おりてきました。ただそこに明治という時代の要素があり、その人々は軍学校へいきましたが、それとてもいろいろなわけがあったでしょう。
 国定教科書はあっさり廃棄、イスラム教徒が敗戦の結果コーランをあっさり廃棄するでしょうか?
 では敗戦にもかかわらず残ったものはなんだったのか。?この把握がとにかくむづかしい。ここにイスラム教徒やキリスト教徒が敗戦になっても捨てないように、日本人が捨てなかったものがあり、それは日常生活の中にあります。行動にあります。しかしこれの把握がむづかしい。みなが意識的に把握しておらず、無意識に持っているからです。
 原理に基づいた。また歴史に基づいた道徳社会ではわが国はありません。妙なものが作用する社会です。そのため衝突が起きたとき、論争ができず、流されることが大半で、大東亜戦争以前に論争のようなものは起きずに、戦争へと進んだのすぎません。
 個人的にはわが国は中東とは異なる現象による国内混乱が生じると見ています。問題はその収拾ですが、これが多分強権によるものになるとみています。ただその強権を日本人が持つか外国人が持つかはわかりません。
 そのヒントとしての戦後のGHQがあります。
面白い統治の仕方をしていますが、おそらくアメリカにわが国の歴史と社会をよく知る人がいたと思います。もちろんその人々は日本をよく知る、日本人から学んだと思います。当時在米した日本人の中には優れた人が多くいましたから。
 山下裁判で弁護をした浜本正勝という人もその一人で、その手の人は多くいたと思います。
 黒船到来以前と似た状況にわが国はなりました。あの時は14年で幕府崩壊でした。似たことがおきるでしょう。あの時は幕府側に優れた人が多くいましたことと、尊王思想が1700年ごろから国内に広まっていたから、これが強力な武器となりまた。
 今わが国にあるのは経済だけです。経済は手段に過ぎないもかかわらず、それを目的と錯覚しています。
 信仰という面から見ると、わが国経済は無理があります。ただ過酷な競争があるからかろうじて、結果として信仰があるような状態となっている。
2015/09/22 09:11 | kenji [ 編集 ]

kenji先生

今、安倍氏を支持しないという大衆はそうでも、理数で考える人はかなり居ると思うよ。精神と科学は全く違う人間の思考です。「科学と宗教」をアルバート・アインシュタインが1930年に書いている。これほど、精神力も理数にも思考力が高いひとはいない。現代の日本人に欠けているのは信仰に根ざした勇気です。美しくあろうとはしている。安倍さんもね。ただそれだけでは、神も仏もない中国とロシアに勝てないのです。満州を書いていると、中露が欧米に遅れている理由がわかる。人間そのものが遅れている。伊勢
2015/09/21 23:47 | 伊勢 [ 編集 ]

 精神力というものは必要だが問題はそれを計数化することせす。この思考が我々日本人はなかなか受け入れられない。
このラグビーにおいて精神力を計数化したデーターを見たいですね。
2015/09/21 18:28 | kenji [ 編集 ]









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プロフィール

伊勢平次郎

Author:伊勢平次郎
 
伊勢平次郎はペンネーム。アメリカへ単身移住してから50年が経つ。最初の20年間は英語もろくに話せなかった。英語というのは、聴き取りにくく、発音しにくい厄介なものだ。負けん気だけで生きた。味方を作ることが生き残る道だと悟った。そのうち、コロンビア映画、スピールバーグ監督、トヨタ工場、スバル・いすゞ工場の北米進出、日本の新聞社に雇われた。2013・6 冒険小説You Die For Me アブドルの冒険(邦題)をアマゾンから出版した。昨年のクリスマスには、King of Pepper(英語版)胡椒の王様を出版した。日本、英国、デンマーク、ドイツの読者が読んでくれたわ。妻のクリステインと犬2匹で、ルイジアナの湖畔に住む。

写真は、ハヤブサ F. p. japonensis。カタカナで書かれる。瞬間飛翔速度は、時速300キロという猛禽。

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