2017/04/11 (Tue) バカにつける薬なし
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米シリア攻撃の大義名分「化学兵器使用」は本当にあったか
2017.4.11

田岡俊次:軍事ジャーナリスト

 米国が4月6日突如シリア空軍基地を巡航ミサイルで攻撃した。午前3時40分(現地時間)、地中海シリア沖の米駆逐艦「ポーター」(8814t)と「ロス」(8364t)がシリア中部ホムス近郊のシュアイラート空軍基地に対し「トマホーク」ミサイル59 発を発射した。ロシア国防省によれば同基地には23発が落下、MiG23戦闘機6機や軍需物資の倉庫、無線施設などが破壊された。空軍大佐1人を含む軍人6名と周辺の民間人9人が死亡したと報じられる。

 攻撃は米国の自衛行動ではなく、国連安全保障理事会の決議によるものでもないから「侵略行為」に当たると考えられる。トランプ大統領は、シリア空軍が4日に同国北西部、イドリブ県のハンシャイフン市に籠る反政府武装勢力「シャーム解放委員会」(元「ヌスラ戦線、アルカイダ所属)の部隊を攻撃した際、「恐ろしい化学兵器で罪のない市民を攻撃した」と述べた。だが仮にそうだったとしても米国が報復攻撃をする法的根拠はない。そもそもが本当にシリア軍が攻撃に化学兵器を使ったのか、疑問の余地が大きいのだ。

化学兵器使用の必要性は少ない
「自作自演」や「飛散」説

 シリアが化学兵器を使ったとは思えない理由はいくつかある。

 被害者の症状から見て、ハンシャイフンで使われたのはサリン等の神経ガスによる可能性は高いが、第1にシリア軍にとり、内戦のいまの状況でそれを使うことには百害あって一利もないからだ。

 シリア軍は昨年12月23日、反政府勢力の最大の拠点であった同国北部のアレッポを奪還した。内戦前のアレッポは人口167万人シリア最大の都市、交通の要衝だったからその攻防戦は内戦の行方を決すると言われていた。同市が陥落したため、反政府側の部族7武装集団(約6.5万人)は12月30日、ロシアとトルコを保証役とする政府側との停戦協定に署名した。反政府武装集団が政府に対する反抗を中止する停戦合意は事実上の降伏や帰順に近い。

だが旧「ヌスラ戦線」部隊と「イスラム国」はこの停戦協定に加わっておらず、ロシアとトルコはシリア政府と協力しこの2大テロ組織との戦いを続けることとなった。トルコは従来シリアの反政府勢力を支援し、アサド政権打倒を目指していたが、アレッポ陥落で、その目標をあきらめ、アサド政権下のシリア政府を支援してきたロシアに接近、反政府勢力への支援を止めたから、旧ヌスラ戦線も孤立、衰弱に向かいつつある。

「イスラム国」はイラクでの支配地を次々に失い、その牙城モスルも米軍の支援を受けるイラク政府軍に包囲攻撃され、いずれ陥落の形勢だ。「イスラム国」が“首都”と称するシリア北部のラッカも米国の援助を受けるクルド人部隊「シリア民主軍」による攻略作戦が始まっている。

 これらの状況を見れば、シリア内戦の大勢はすでに決し、シリア政府軍が着実慎重に平定作戦を進めて行けば内戦は一応終了する形勢で、化学兵器などを使う必要はありそうもない。もし化学兵器を使えば外国から人道支援団体も入っているからすぐに露見し、非難を浴びることは必定で、シリア政府は折角の順風を、少なくとも一時的には、失う結果になりかねない。

 一方、このままでは滅亡、の窮地に立つ「イスラム国」や旧「ヌスラ戦線」は一挙挽回の策を考えざるをえない。シリア空軍の攻撃を受けた際に神経ガスを放出し、シリア政府軍の行為として非道を訴え、米国を介入させようとする戦術に出る可能性はある。支配地域の住民を犠牲にすることになるが、ヌスラ戦線は大規模なテロ活動で多くの民衆の命を奪ってきたアルカイダの一派だ。それ以上に残虐な行為を続けてきた「イスラム国」はモスルなどでも住民を「人間の盾」として使っているから、冷酷な行動を取ることをためらわないだろう。

 オウム真理教は簡単な施設でサリンを製造したし、シリア反政府派が出撃基地としていたトルコ南部でサリンを造ろうとして、トルコ警察が摘発した事例もあった。また反政府勢力がシリア軍の基地を占領した際に化学兵器を奪取した、との情報も2013年に出ていた。

 ロシアでは「シリア空軍が旧ヌスラ戦線の弾薬庫を爆撃した際、そこにあった化学兵器が飛散したのではないか」との説も出ている由で、これもありそうな話だ。シリア政府が、誰が考えても、自らにとって有害無益なことが明白な化学兵器使用をあえてした、という説よりは、旧ヌスラ戦線の「自作自演説」や、シリア軍の航空攻撃の際の「飛散説」の方が可能性は高いと思われる。

神経ガスの過去の使用者
国連調査で特定されず

 第2の疑問はシリア政府軍が神経ガスを持っているのか、という点だ。2013年の3月、4月にアレッポなどで化学兵器が使われる事件が4回起きた。シリア政府は国連に調査団派遣を要請。調査団が同年8月18日にダマスカスに到着、調査を始めようとした矢先の21日夜、ダマスカス郊外の反政府派支配地域に対し大量の化学兵器が使われ、約300人が死亡する事件が起きた。

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2017.4.11
米シリア攻撃の大義名分「化学兵器使用」は本当にあったか

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提供:Mass Communication Specialist 3rd Class Ford Williams/U.S. Navy/AP/AFLO
 米国が4月6日突如シリア空軍基地を巡航ミサイルで攻撃した。午前3時40分(現地時間)、地中海シリア沖の米駆逐艦「ポーター」(8814t)と「ロス」(8364t)がシリア中部ホムス近郊のシュアイラート空軍基地に対し「トマホーク」ミサイル59 発を発射した。ロシア国防省によれば同基地には23発が落下、MiG23戦闘機6機や軍需物資の倉庫、無線施設などが破壊された。空軍大佐1人を含む軍人6名と周辺の民間人9人が死亡したと報じられる。

 攻撃は米国の自衛行動ではなく、国連安全保障理事会の決議によるものでもないから「侵略行為」に当たると考えられる。トランプ大統領は、シリア空軍が4日に同国北西部、イドリブ県のハンシャイフン市に籠る反政府武装勢力「シャーム解放委員会」(元「ヌスラ戦線、アルカイダ所属)の部隊を攻撃した際、「恐ろしい化学兵器で罪のない市民を攻撃した」と述べた。だが仮にそうだったとしても米国が報復攻撃をする法的根拠はない。そもそもが本当にシリア軍が攻撃に化学兵器を使ったのか、疑問の余地が大きいのだ。

化学兵器使用の必要性は少ない
「自作自演」や「飛散」説

 シリアが化学兵器を使ったとは思えない理由はいくつかある。

 被害者の症状から見て、ハンシャイフンで使われたのはサリン等の神経ガスによる可能性は高いが、第1にシリア軍にとり、内戦のいまの状況でそれを使うことには百害あって一利もないからだ。

 シリア軍は昨年12月23日、反政府勢力の最大の拠点であった同国北部のアレッポを奪還した。内戦前のアレッポは人口167万人シリア最大の都市、交通の要衝だったからその攻防戦は内戦の行方を決すると言われていた。同市が陥落したため、反政府側の部族7武装集団(約6.5万人)は12月30日、ロシアとトルコを保証役とする政府側との停戦協定に署名した。反政府武装集団が政府に対する反抗を中止する停戦合意は事実上の降伏や帰順に近い。

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伊勢平次郎

Author:伊勢平次郎
 
伊勢平次郎はペンネーム。アメリカへ単身移住してから50年が経つ。最初の20年間は英語もろくに話せなかった。英語というのは、聴き取りにくく、発音しにくい厄介なものだ。負けん気だけで生きた。味方を作ることが生き残る道だと悟った。そのうち、コロンビア映画、スピールバーグ監督、トヨタ工場、スバル・いすゞ工場の北米進出、日本の新聞社に雇われた。2013・6 冒険小説You Die For Me アブドルの冒険(邦題)をアマゾンから出版した。昨年のクリスマスには、King of Pepper(英語版)胡椒の王様を出版した。日本、英国、デンマーク、ドイツの読者が読んでくれたわ。妻のクリステインと犬2匹で、ルイジアナの湖畔に住む。

写真は、ハヤブサ F. p. japonensis。カタカナで書かれる。瞬間飛翔速度は、時速300キロという猛禽。

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